【VODはキャズムを越えたか】その6)テレビ番組が検索されやすくなるために、メタデータが活躍する。
年が明けてから、VODについて書き連ねてきました。今年2015年は日本のVODサービスにとって“元年”とも呼べる節目になると思ったからです。早々にNetflixの日本上陸が発表されたのは、その証しだと思います。
これに刺激を受けて、各サービスが活性化したり新たな事業者も参入して全体が大きく成長するでしょう。最大会員数を持つDoCoMoのdビデオが黙ってるはずがないし、huluは勢いを増すにちがいありません。これまで沈黙していた感のあるAmazonが存在感を発揮するでしょうし、JCOMは視聴可能世帯が多いので潜在力を解き放つ可能性もあります。
Netflixが日本で活動を始めることで、他の事業者もいよいよサービスに力を入れてラインナップを増強したりUXを進化させたりプロモーションに力を入れるようになることで、VOD市場全体が大きく活性化し全体としてユーザー数が増えていくことでしょう。結果的には、どのサービスにもプラスになる話だと思います。
一方、去年スタートしたテレビ番組の見逃し無料配信もいよいよ活発になるにちがいありません。配信する番組数を増やしたり、アクセスが増えるような仕組みも整えるはず。この「アクセスが増える仕組み」の中には「検索されやすい」とか「ソーシャルでシェアされやすい」といった施策が考えられます。
例えば、「なんか、昨日の○○○で△△△が□□□しちゃったらしいね!」とtwitterで話題になる。実際にそんなことはよくあるし、そういう話題は多くの人の注目を引きます。それを見越して、テレビ番組の中で起こった面白い出来事を記事にして配信しているちゃっかりしたメディアもあります。でも当然、そこに載っているのは番組から書き起こしたテキストだけです。
もしそんな話題が巻き起こった時に、実際の番組そのものが視聴できたら、たくさんの人が見てくれるでしょう。テキストの記事でさえアクセスを稼ぐのだから、映像だと何十倍何百倍も人を集められそうです。
この「○○○で△△△が□□□」を発見してもらうために、メタデータが役立ちそうです。何しろ、映像はそのままだと検索の対象にされない。これ、考えてみると面白いなあと思うのですが、検索対象はあくまで言葉です。テキストなのです。例えばYouTubeで映像を検索できるのも、映像そのものではなくタイトルやタグにその言葉があるからですね。
ましてやテレビ番組の中で「○○○で△△△が□□□」したなんて、内容をていねいにテキスト化しないと検索対象になりようがない。この「内容をていねいにテキスト化」したものがTVメタデータです。番組とメタをひもづけておけば検索されることになります。
見逃し視聴の話を書きましたけど、NetflixやdビデオのようなSVODサービスでも同様です。「あのー、○○○監督で△△△が刑事役で主演した、なんか□□□が舞台で×××が起こるやつ、なんだっけ?」そんな検索にもメタデータが役に立つでしょう。
検索され、話題になり、ソーシャルで拡散される。いま報道記事やブログ、YouTube上の映像で普通に行われている流れに、テレビ番組や映画も乗せることができる。そのためにメタデータが今後ますます必要になりそうですね。これをうまく活用すれば、これまでマイナーな存在だった番組や映画が、逆に日の目を浴びる機会も出てきそうです。
面白い時代がいま、はじまろうとしています。
関連記事
著者:境 治 (さかい・おさむ)
コピーライター/メディアコンサルタント
株式会社エム・データ顧問研究員
東京大学文学部卒。コピーライターとしてフリーランスで活動した後、
ロボット、ビデオプロモーションを経て、13年7月から再びフリーランス。
ブログ「クリエイティブビジネス論」はハフィントンポストなどに転載されている。