【VODはキャズムを越えたか】その10)dビデオがdTVになり、データによるレコメンデーションがはじまる。
VODについては前回で一度おしまい、のつもりだったのですが、先週注目すべき発表があったので前言を翻して今回も書いてしまいますね。いい加減ですみません。
4月2日にdビデオが大々的に発表会をやるというので行ってきました。そしたら大々的に発表会をやるだけの内容でいろいろびっくりでした。発表のポイントは以下です。
1:UIのリニューアル=ザッピングUI
2:テレビを視聴端末に=そのための端末を発売
3:オリジナル作品に力を=プレミアムコンテンツ拡充
とくに2を意識して、4月22日から名称をdビデオからdTVに変更するそうです。
このリニューアルについては別のところで詳しく書きたいと思いますが、メタラボとして注目したいのは「1」です。UIの変更とともに、レコメンデーションをdTVの中でやっていくそうです。「あなたにオススメチャンネル」という機能で、個々人に合ったコンテンツを推奨してくれる。これまでのVODにはなかった要素です。
Netflixが注目されているのも、そのレコメンデーションがよくできているからでもあります。ユーザーが選ぶコンテンツの75%はレコメンされたものなのだとか。この手のサービスはコンテンツが膨大になるほど、どれを観ればいいかわからなくなり、下手をすると継続して使われなくなる。うまくレコメンすれば、ヘビーなユーザーになって逃げられなくて済むわけです。
dTVでは、作品を分析してそれぞれにものすごい数のタグをつけ、それとユーザーの視聴傾向を照らし合わせてレコメンデーションするのだそうです。
この分析エンジンの開発にはIBMの力を借りたといいますから、かなりレベルの高いものになっていると期待できますね。
さてここでは「タグ」という言い方になっていますが、やはりメタデータが重要なわけですね。現時点でもdビデオの個別の作品にはタグがついています。これは役者や監督などだけでなく、「どんな作品か」を言語化したものです。例えば『アナと雪の女王』には「ハラハラ大盛り」「強いぞ!女子」「“愛され”系」など二十数種のタグがついていて、それを押すと同じタグを含む他の作品のリストが表示されます。作品を選ぶヒントとしてタグが機能しているのです。
これをものすごく高度に応用したのが、新しいレコメンデーションエンジンなのでしょう。メタデータを活用する考え方の一端がここから学べますね。
DビデオからdTVへの進化は、いちユーザーとしても大いに期待しています。4月22日が楽しみです。使用感など見えてきたら、またここでも報告したいと思います。
著者:境 治 (さかい・おさむ)
コピーライター/メディアコンサルタント
株式会社エム・データ顧問研究員
東京大学文学部卒。コピーライターとしてフリーランスで活動した後、
ロボット、ビデオプロモーションを経て、13年7月から再びフリーランス。
ブログ「クリエイティブビジネス論」はハフィントンポストなどに転載されている。