【番組配信は次のステップへ】その1)見逃し無料配信が出揃った。そこにはどんな可能性が?
民放キー局が2014年から乗り出している、番組の見逃し無料配信。日テレが去年1月にスタートしたのを皮切りに、TBSが続き、2015年からはフジテレビも開始しました。
そしてこの4月、テレビ朝日とテレビ東京もあいついで見逃し配信のスタートを発表しました。
テレビ朝日は「テレ朝動画on GYAO」と称して、Yahoo!の動画サービスであるGYAOで無料配信を実現。ドラマとバラエティ1本ずつでのスタートです。
「GYAO!」でテレビ朝日番組を無料見逃し配信―「さまぁ~ず×さまぁ~ず」など放送終了後にインターネットで
テレビ朝日はこれとは別にサイバーエージェントのAmeba事業と提携した定額制の配信事業にも参画しています。でもこちらは、どちらかというとサイバーエージェント主導のようで、新しくできた合弁会社もあちらの連結対象なのだそうです。
サイバーエージェントとテレ朝が合弁新会社 定額制動画配信とニュースチャンネル展開
一方テレビ東京は「ネットもテレ東キャンペーン」と題してバラエティ番組5本を無料配信。しかもニコニコチャンネルでも配信してコメント書き込みもできるようにするそうです。これはちょっとラディカル!テレビ局の側が画面を視聴者と“共有”することを公式に行うことは珍しいですね。
テレビ東京は併せて番組のサイマル配信もはじめています。毎朝放送される『ニュースモーニングサテライト』をネット上でも放送と同時に配信するというもの。これも地上波の番組としては画期的です!
一方、民放連が主導するキー局合同の見逃し無料配信サイトも具現化するようです。いつの間にか、テレビ局のネット配信がアクセルをかけて動きはじめています。ついこないだまで「ネットは敵だ」というのがテレビ局の姿勢だったのに、変われば変わるものですね。
さて番組のネット配信が進むと、そこにはどんな可能性があるのでしょうか。これからテレビ番組は「ネットで探せる」ものになる、ということです。
実際いま、「昨日のテレビ番組○○○で△△△が□□□と言ったらしい」という情報がネット上でよく話題になります。ソーシャルメディア上でつぶやかれたり、その情報をもとにした記事が拡散されたりしています。でも映像はない。あるいはYouTubeにあがっている海賊映像しか見られない。
今後、ネットで話題になった番組がネット上に存在するようになると、昨日△△△が□□□って言ったってよ!」と聞いたらすぐに検索すれば「ホントだ!やっべえ!」と直接映像を見ることができるようになる、のでしょう。
テレビ番組の価値が高まるかもしれません。いままでは、一度放送しておしまいで、その時の視聴率や広告収入以上の価値にはできなかった。それが、ネット上で拡散され、放送後に何度も視聴されたら。その分の広告収入が得られれば、価値が高まる。放送時は深夜でさほど視聴されなかった番組が、ネット上で何度も見られると、理論上はネットでの広告収入がテレビ放送での収入を上回る可能性が出てくる。あくまで理論上です。でも、ありえるのです。
そうなると、テレビをめぐるいろんな事柄が変化するかもしれません。そこを、しばらく考えてみたいと思います。
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著者:境 治 (さかい・おさむ)
コピーライター/メディアコンサルタント
株式会社エム・データ顧問研究員
東京大学文学部卒。コピーライターとしてフリーランスで活動した後、
ロボット、ビデオプロモーションを経て、13年7月から再びフリーランス。
ブログ「クリエイティブビジネス論」はハフィントンポストなどに転載されている。