【番組配信は次のステップへ】その2)番組の中の“その瞬間”にURLをつけられるか?
番組配信について考えを進めていきますよ。
見逃し無料配信が盛んになると、「昨日△△△が□□□って言ったってよ!」というシーンが話題になったら、その場面がネットで見られるかもしれないと前回書きました。そしてそこに広告収入をもたらせるかもしれない。
とりあげるのにあまりいい例ではないですが、先日ある番組で某野球評論家が、ベテランサッカー選手に引退すべきと発言した、と大いに話題になりました。面白いことに、それを取り上げたネット上のニュースサイトもたくさんありましたね。そして、それらはものすごい数の「いいね!」がついています。きっとPV数もかなりのものでしょう。
その野球評論家が、そのコメントを言ったシーン。これをネット上で再生できたらどうでしょう?テキストのニュースサイトでさえ膨大なPV数になっていたのですから、実際に動画で見られれば大変な再生数になるでしょう。100万じゃきかない再生数をあっという間に獲得できるのではないでしょうか。必死にアクセスを稼ごうと四苦八苦しているネットメディアからすると、信じられないというか羨ましいというか、あっさり莫大なアクセスを稼がれてぼう然とするかもしれません。
ただしその際に、当該番組の最初から再生されるようだと、莫大な再生数は獲得できないでしょう。話題になってるのは、その番組全体ではないんです。「昨日△△△が□□□って言ったってよ!」とみんなが注目している、その“△△△が□□□って言った”ほんの数十秒だけなのです。そこだけをすぐさま見たい!番組全体がいくら無料で配信されていても、当該シーンをパッと再生できなくては意味がないのです。
ということは、当該番組全体ではなく、“その場面”に絞って拡散されねばならない。そして拡散されるということは、“その場面”独自のURLが必要です。URLをコピペしてソーシャルで投稿するから拡散できるわけですからね。投稿の中のそのURLを押したら即、“その場面”が再生される、そういう構造が作れないといけないわけです。
ということは、“その場面”が切り出された独自の映像を編集によって作成するのでしょうか?話題になる場面がひとつだけならいいけど、この場面では別の人が言ったコメントが面白かったし、別の場面でのこの人の発言も話題になりそう・・・そんなことをやっていたらキリがありません。場面場面での切り出しを番組ごとにやっていたら、徹夜で倒れちゃうスタッフが続出しそうです。
編集して切り出し、なんて面倒なことしなくても、場面ごとの独自URLが生成されればいいわけですね。・・・ってそんなことできるわけない・・・いや、どうもできるみたいですよ。
ところで、この記事を書いている間に、某ベテランサッカー選手の引退を口にした某野球評論家が、自分の発言を反省し撤回したことがネットで話題になりました。サッカー選手がその発言にむくれたりせず、率直に受け止めたのが効いたようです。その野球評論家も選手時代は偉大な選手だったわけですが、そんなえらい人が率直に反省したことは、ちょっとグッと来ます。少々殺伐とした話題だったのが、逆にいい話になったのです。
ほら、ね!こうなると、ネガティブな発言した時と、率直に反省した時と、両方を動画で見たくなります。両方合わせて動画で見られたら、とんでもない再生数になったことでしょう。あとから両方を動画で見る、という新しいコンテンツの楽しみ方になったかもしれない。これは本気で取り組まなきゃですぞ!
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著者:境 治 (さかい・おさむ)
コピーライター/メディアコンサルタント
株式会社エム・データ顧問研究員
東京大学文学部卒。コピーライターとしてフリーランスで活動した後、
ロボット、ビデオプロモーションを経て、13年7月から再びフリーランス。
ブログ「クリエイティブビジネス論」はハフィントンポストなどに転載されている。