【TV Rank】夏のボーナスとTVCM
ライフログラボ(ライフログ総合研究所、略称”L3”)、所長の梅田です。
このブログではクラウド型TVデータサービス「TV Rank(テレビランク)」からの最新データをご紹介しています。早速、最新のTV Rankを見てみましょう。
先週、2015年6月7日から13日までの一週間のTVCM企業ランキングには、2位にスズキ(http://www.suzuki.co.jp/)が入りました。先週の関東地区でのスズキのCM総放送秒数は10,335秒、CM本数は689本、この期間に放送された全業種全CMに占めるスズキのCM放送シェアは2.023%でした。放送シェアで先週2%を超えたのは、1位の花王とスズキだけでした。
TV Rankの企業別分析で6月1日以降のスズキを見ると(図1)、6月5日の金曜日から一日あたりの総CM放送秒数が1,000秒を超えたのがわかります。その後一日あたり秒数は1,000秒を下回ることなく、今回のデータの最新の日付である6月13日土曜日には1,980秒となり6月1日以降の露出ピークを更新しています。今回2位となったスズキのCM露出集中には、企業としての強い意志を感じますね。ぜひ、良いビジネス結果に結びつけていただきたいものです。
スズキのこのCM露出集中と増加傾向が今後も続くのかどうか、それを考察する手がかりとしては、昨年同期との対比をしてみることが有効です。この短期の集中傾向は今年に限るものなのか、それとも例年の傾向なのか、それにより今回のこの動きには今年に限っての例外的な戦略背景があるのか、例年のシーズナリティによるものなのかが判断できます。また、経年での規模や展開内容を比較することで、スズキが今年どのような企業判断を込めてこのキャンペーンを開始したのかがわかります。過去の例年のTV Rankもご利用可能ですので、ご興味がおありの方はぜひお問い合わせください。
さて、仮にこのCM露出集中が今年に限ったものであったとしたら、それはスズキ自身の企業内にある要因から決定された戦略である可能性が高いですね。たとえば、有力な新商品の発売です。逆に例年の傾向であるとすると、それはシーズナリティによるものである可能性が高く、企業要因のシーズナリティには決算が、市場要因のシーズナリティには需要期が、そして多くの場合はその両方、つまりその企業のコアビジネスの需要期に合わせて決算期が設定され経営が行われているケースが多いですね。そうしますと、例年のCM露出規模の増減はその企業の決算と、上場企業の場合はそれを織り込んだ株価との連動性も出てくるかと思います。このあたりのストーリーにご興味がおありの方も、ぜひお問い合わせください。
6月といえば、ボーナス期ですね。日本はデフレが長く続き、雇用形態や賃金報酬の形態も多様化したため嘗ての高度成長期のようなボーナスの支給期が企業の売り上げに敏感に反映されるような状況ではなくなってきているかもしれません。ただ、今年はアベノミクスの影響もあり久しぶりにベアという言葉やボーナスにまつわる明るい話題を聞くことも多くなりました。図1の6月1日以降のスズキのCM商品シェアを見ると、ワゴンR、ラパン、ハスラー、スペーシア、スイフトスタイルが仲良く16から18%のシェアを分け合っています。スズキとしては、この5車種をこの時期の販売主力商品として、同じような力をかけていきたいようですね。少数の車種に特化してなんらかのマーケティング目的を達成するというよりは、この時期は、主力商品のラインナップの底上げをすることが重要なようです。どうやら夏のボーナス対応の出稿のようですね。
図2は4月以降のスズキのCMクリエイティブ明細です。この5車種のCM露出ピークが6月7日週であることがわかりますね。ちなみに6月以前に露出ピークが置かれているのはベッキーのアルト、KAT-TUNのソリオ、起用タレントやクリエイティブ内容から商品ごとのターゲットセグメントが想定できますね。TV Rankではクリエイティブの映像、状況設定やCMのぶら下がり情報など、更に詳しいクリエイティブ詳細画面も用意しています。またご覧のように、細かい改訂バリエーションごとのクリエイティブが時系列ですべて記録されていてTV Rankメニューから企業、商品、時期などの切り口で簡単に絞り込み検索が可能ですので、様々な企業の商品戦略、マーケティング戦略を俯瞰で簡単にご覧いただくことが可能です。皆様の仮説に応じてデータを様々に切っていつでも取り出すことができるのです。これが皆様の業務にとってどれだけ有用なことか、ご想像いただけると幸いです。
このブログでは、これからもTV Rankからの最新情報をお届けしてまいります。どうぞ、お楽しみに!
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著者:梅田仁 | Jin Umeda
ライフログ総合研究所(Life Log Lab.)所長
iPhone、iPod、iTunes、Mac、Apple TV、Apple Storeのシニア・マーケティング・プロデューサーとして、Apple(AAPL)を時価総額世界一のブランドに育て上げることに貢献。iTunesで取り扱う内外のエンターテインメント・コンテンツ、アーチストの需要トレンド、視聴者の嗜好パターン分析を通してプラットフォームメディアビジネスにも精通。2013年、ライフログ総合研究所を設立、TV Rank、Talent Rankサービスを展開中。著書:「売れない時代に売る新常識」出版文化社、2011