【TV Rank】タレントはブランドに何をもたらすのか?
ライフログラボ(ライフログ総合研究所、略称”L3”)、所長の梅田です。
このブログではクラウド型TVデータサービス「TV Rank(テレビランク)」からの最新データをご紹介しています。早速、最新のTV Rankを見てみましょう。
先週、2015年6月14日から20日までの一週間のTVCMタレントランキングは、珍しく上位を男性タレントが占めました。1位は阿部寛さん。伊藤ハムとJALの出稿が集中しました。2位は伊勢谷友介さん。商品ランキングで先週2位に入ったマシーンゾーンのゲームオブウォーのCMに出演されています。ソーシャルゲームの世界では、新しいタイトルが次々に出てきますね。今最もTVCMを活用しているのが、ネットの世界でマネタイズをしている企業です。実はこのネットビジネスのプレイヤーたちが、TVの実力を今一番理解しているのではないかと思います。この話はまた改めていたしましょう。
CMタレントランキング3位は、刑事サスペンス調のNTTドコモの新作に出演された、堤真一さん、綾野剛さん、高畑充希さん、高橋英樹さん、真麻さんです。真麻さんは紅一点ですが、往年の太陽にほえろ(古いですかね?)を思わせる“とにかく走る刑事”の演出がいいですね。続く4位は、ハスス食品のジャワカレーに出演された北島康介さん。水泳の練習の後に、カレーをガッツリ食べていそうですよね。
ここまでの上位4位までをほぼ男性タレントが独占しているのは、面白いなぁと思います。
最近のTVCMでのタレント起用には大きく二つの方向性があるかと思います。1つはソフトバンクモバイルに代表される多人数起用ですね。今回のNTTドコモの例もそうですが、複数のタレントを起用することによって彼らで作り上げる世界観、ドラマ性、ストーリーを得ることができます。ブランドイメージに物語性を与え、その物語が長く続き、自由に展開し、タレントも入れ替わりながらさらに活性化し、また物語のディテールから販促グッズやキャンペーンのスピンアウトも可能、TV以外のメディアやデジタル、店頭との連携も可能、まさにマーケティング・インテグレーションの時代ならではの起用法ですね。
もう一つはどちらかというと伝統的な、一人のタレントさんをブランドや商品のイメージキャラクターとして起用していく方向です。タレントの持つパーソナリティ、イメージなどのキャラクターをブランドとオーバーラップさせることで、ブランドになかった価値を与える、ファン層のセグメントにアプローチする、あるいはそれまでブランドが持っていた価値をさらに強化する、焦点を明確にするなどのメリットがあります。そのタレントを見てわかること、感じることが、そのままブランドのキャラクターやその商品に付与したいイメージに置き換わっていく、そんな起用法です。前者はタレント以上にCMの物語性、世界観とブランドとの想起を作り上げていくことが大切ですし、後者はタレントのキャラクターと意図したブランドパーソナリーティーとの親和性を取ることが大切ですね。
TV Rankのタレントランキングは、CMでの起用単位でのランキング集計をしていますので、タレント単独でノミネートするケースと、集団でランクインしているケースがあります。タレントサマリーではタレント名で集計することが可能ですので、単独起用、マルチ起用を合わせたタレントごとのサマリーを見ることができます。また、タレントサマリーから出演商品ごと、企業ごとに集計を絞ることもできます。色々とご活用いただけますので、ぜひお試しいただければと思います。
阿部寛さんのタレントサマリーを見ると、三菱東京UFJ銀行、トヨタ自動車、JAL、この辺りは阿部さんと企業イメージとの連携が狙いにありそうですね。たぶん、切実で、真面目で、信頼ができて、そんな阿部さんの印象が、ポイントなのかもしれません。逆に見ると、これら三者の企業イメージや顧客に届けたい価値には共通点が多いのかもしれません。
阿部さん出演のジョンソン&ジョンソンのCM商品はリーチホウィトニングですが、TV Rankのクリエイティブ詳細分析で見ると、訴求メッセージが「三つの美白機能、磨くだけで美白」。そういえば阿部さんて、笑顔の時に見えるガッチリした歯が、いつも真っ白に輝いている印象ですよね。なるほどなるほど。
コカコーラは“いろはす”。日本生まれの天然水が訴求ポイントです。最近はさらに地元産を打ち出し、瀬戸内産レモンのフレイバーなど、日本の大地から採れる水や作物を、古来から変わらない天の恵みをそのままお届けしたい、というメッセージが見えてきます。そういえば阿部さんて、西洋というより実は縄文系の、毛深くて彫りが深くて屈強な男性ですよね。先の企業イメージとオーバーラップさせたいキャラクターも、日本人の良さそのもの。その阿部さんが日本の大地から天然水をぐわっと汲み上げているわけで、なんだか日本武尊が命の水を人々に分け与える印象を持ってしまうのは、私だけでしょうか。
伊藤ハムはコク、深み、熟成、伝承、セキスイハイムは日本中にもっとあったかを、各社各様に阿部さんの印象をうまく引き出しているわけですね。
タレントはTVCMの重要な要素であり、その起用方法によっては企業の業績や人々の生活にも様々な影響を与えるものかもしれません。ご紹介したTV Rankからは、すべてのCMタレントの状況をご覧いただき、分析いただくことが可能です。TV Rankは皆様のPCやiPadなどのタブレットからブラウザー経由でご利用いただくことが可能です。TV Rankについてご興味、ご関心をいただけましたら、是非お気軽にお問い合わせください。
このブログでは、これからもTV Rankからの最新情報をお届けしてまいります。どうぞ、お楽しみに!
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著者:梅田仁 | Jin Umeda
ライフログ総合研究所(Life Log Lab.)所長
iPhone、iPod、iTunes、Mac、Apple TV、Apple Storeのシニア・マーケティング・プロデューサーとして、Apple(AAPL)を時価総額世界一のブランドに育て上げることに貢献。iTunesで取り扱う内外のエンターテインメント・コンテンツ、アーチストの需要トレンド、視聴者の嗜好パターン分析を通してプラットフォームメディアビジネスにも精通。2013年、ライフログ総合研究所を設立、TV Rank、Talent Rankサービスを展開中。著書:「売れない時代に売る新常識」出版文化社、2011