【TV Rank】お盆休みとTVCM
ライフログラボ（ライフログ総合研究所、略称”L3”）、所長の梅田です。
このブログではクラウド型TVデータサービス「TV Rank（テレビランク）」から、様々なデータをご紹介しています。今回はお盆休みとTVCMの話題です。
図1は、2014年8月9日（土）から17日（日）までの、昨年のお盆休み期間のTVCMブランドランキング（関東地区）です。1位はDMM.COM。DMMはこの期間に合わせて、8月8日午前10時から8月18日正午までの間「半額キャンペーン」を実施、TVCMを使った利用促進プロモーションを行いました。2位はY!mobile、そして3位以下にはソーシャルゲームのブランドがずらっと続きます。
お盆のある8月は、昔から広告業界では二八（にっぱち）と呼ばれて広告の閑散期でした。寒い2月と暑さと休みの重なる8月は消費の閑散期で、TVを含めた広告出稿もこの期間は他の月よりも減る傾向がありました。この時期にいかに数字を作るかが広告代理店やTV局の腕の見せ所であり、この時期にしか見られない特番が組まれるのも、背景にはそのような事情があります。ニッパチで数字が作れれば、そのあとの決算効果は大きいものがあります。逆に言うと、この時期にあえて広告を出していただける広告主は、代理店や放送局にとってはとても重要なお客様ではないかと思います。
生活者の視点から考えると、8月は夏休みという日常とは違う生活体験の機会であり、ここに焦点を合わせたマーケティングが企画できれば、それはとても有効ですね。
実際にソーシャルゲーム以外でもランキングには、住宅、トラック（！）、デリバリーピザ、ランドセルといった、帰省先やリゾートや、どこにもいかないけど自宅で、普段なかなか一度に顔をあわせることのない家族が一緒にのんびりテレビを見ている時間が増えるであろうシチュエーションを狙った商品が目立ちます。「あなたぁ〜、そろそろウチの配送のトラックも新しくしたら？」「そうだよ、パパ、かっこいいやつがいいなぁ」みたいなお茶の間の会話を期待しているわけですね（本当？）。
図2は昨年のお盆休み期間のCMブランドNo.1、DMM.COMのCM出稿パフォーマンスです。日中昼間の時間帯、11時から18時のゾーンにCM露出が集中していますね。年末年始やゴールデンウイークと並んで長期の休みが取りやすいお盆期間、その一週間の日中昼下がりにテレビをご覧になっている層に向けて「今なら半額！」。手元のスマートフォンでアクセスいただければ、すぐに利用ができるわけです。わかりやすいですね。
特定の期間とライフシーンに合わせてオファーを絡めて訴求する手法は、どちらかと言うとその瞬間のコンバージョンを優先するネット広告的なアプローチです。ソーシャルゲームの場合は他の期間も出稿していますが、このお盆の期間にCM露出を増やすタイトルは多いようですね。やはりゲーム利用のチャンスが増える期間ということでしょうか。
気になるのは、各社が思惑通りユーザーを獲得できたのか、ということですね。普段と違う視聴習慣を捉えるということは、普段と違うライト層にアプローチするという意味合いもあり、この方向ではコンバージョン効率は落ちていきます。ライト層の場合はアクションに至るハードルが上がってしまい、コンバージョンに致る時間やステップが、コア層よりも多くかかるわけですね。ただこのライト層を取り込んで行かないと、ユーザーベースは拡大しないわけです。また、リーチを広げるという以外にも、既存ユーザーを再活性する、利用度をあげるという方向もあります。ただ既存ユーザーの場合はTVCM以外でもコンタクトが可能であり、コンタクト効率は普通であれば落ちていきますよね。このあたり、各社の戦略がどのように描かれて、TV以外の施策も含めてキャンペーン全体でどのようにマネージされたのかは興味深いところですね。
今年のお盆、皆さんのご予定はいかがですか？
お盆休みの帰省先やリゾートで、あるいは普通に仕事だよという方も、普段見ない時間帯に見たTVで、あまり見かけないブランンドや企業のCMが流れてきたら、その裏にはご担当者の大変な苦労や様々な思惑があるのかもしれないなぁと推測させていただくのも、夏の夜の愉しみかもしれません。
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このブログでは、これからもTV Rankからの最新情報をお届けしてまいります。どうぞ、お楽しみに！
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著者：梅田仁 ｜ Jin Umeda
ライフログ総合研究所（Life Log Lab.）所長
iPhone、iPod、iTunes、Mac、Apple TV、Apple Storeのシニア・マーケティング・プロデューサーとして、Apple（AAPL）を時価総額世界一のブランドに育て上げることに貢献。iTunesで取り扱う内外のエンターテインメント・コンテンツ、アーチストの需要トレンド、視聴者の嗜好パターン分析を通してプラットフォームメディアビジネスにも精通。2013年、ライフログ総合研究所を設立、TV Rank、Talent Rankサービスを展開中。著書：「売れない時代に売る新常識」出版文化社、2011