【Talent Rank】タレント四季報・渡辺直美が2018年秋のお笑いタレントNo.1
エム・データが提供するタレント全量データサービス「Talent Rank」の四半期別レポート「タレント四季報」の最新号(2018秋)から、お笑いタレントランキングをご紹介しよう。
上図は「タレント四季報・2018秋(7-9月)」号のお笑いタレントランキングだ。
ナンバーワンに輝いたのは、渡辺直美。800点を超えるタレントスコアを獲得し、2018年7-9月期のTalent Rankお笑いタレント部門で第一位となった。
このタレントスコアは期間中にテレビに露出した全てのタレントのテレビ番組露出量とテレビCM放映量、そして同じく期間中に週250名以上からツイートされた全てのタレントのTwitter投稿アカウント数をそれぞれ偏差値化して算出したもの。タレントのテレビ露出パワーとネットバズパワーを表す指標だ。渡辺の場合は週平均700分を超える圧倒的なCM量が貢献して、2018年秋のお笑いタレントNo.1の座を獲得した。
このランキングの二位から四位のタレントも渡辺同様タレントスコアの三要素である、テレビ番組、テレビCM、Twitterのそれぞれでバランスよく得点しているが、これら上位陣の中で一人だけ週平均700分を超えるテレビCM量が渡辺を一位に押し上げた。お笑いタレントのCM女王が、総合ランキングでもナンバーワンというわけだ。
このお笑いタレントランキングでの注目点は、前年比だ。
お笑いタレントの場合ブレークのスピードが急で、新人が突然売れだしてあっという間にテレビで見ない日はない超メジャータレントが誕生する場合がある。「タレント四季報」の場合、そんな急成長タレントは前年比を見ていただくことで簡単に絞り込むことができる。
今回のランキングで最も急成長しているのは34位だ。
前年比が無い、ということは、一年前のこの時期はこのタレントはタレントスコアのランク外、つまりテレビ番組露出量とテレビCM放映量がゼロだった、ということ、そしてそのタレントのことをツイートしていたのも週250名未満かもしかするとゼロだった、ということだ。テレビには一切出ていなくて、ネットでのバズもごく僅かかほとんどない状態、そんなタレントが一年後の今季、テレビ番組露出が週400分、Twitterも約8万件と、この二つのスコアだけならお笑いタレント中トップ5に入れるレベルに急成長しているのだ。これがお笑いタレントのブレークパワーだ。この34位のスコアにテレビCMがつけば、トップ10入りする超売れっ子お笑いタレントの誕生である。私が事務所の社長なら、広告代理店に軒並み頭を下げてテレビCM契約獲りの営業をしまくるだろう。
ただ一つ問題がある。34位の前期比が僅かではあるがマイナスなのだ。前年比は確かにすごいが、前期比ではマイナスになっている。もしかしてもうピークを迎えた??テレビCMの契約がつくか、その前に番組露出が落ち始めるか、まさに今がタレントとしての正念場なのかもしれない。
ただ、CMタレントになるのは簡単なことではない。そのタレントがマーケティング要素としての条件を満たし、採用する広告主の満足を得なくてはならないのだ。ただテレビに出ている、バズがついているというだけではダメだ。
特に34位のように急激にブレークしたお笑いタレントの場合、そのブレークの内容が広告主の要求に見合うとは限らない。ブレークが過激であればあるほど、ネットでネタにしたりテレビの視聴者を驚かせたり呆れさせたりするのには良くても、一般広告主にとってはちょっと敬遠したくなるような一発芸で受けている場合もあるので、よほど広告内容にその芸がはまる必然性でもない限りはお声がかからないのが現実だ。
その意味で34位と同じく前年比が大きくプラスになっているランキングの4位と10位、この両者にはきちんとCMがついてる。前期比も伸びていて、このまま上位に定着していくタレントになるのかもしれない。
では、そうではないタレントはどうすればいいのか。
実は単にテレビCMの契約を取るというだけではなく、急激にブレークしたタレントの賞味期限そのものを伸ばすことにもつながる方法がある。あるいは、そのようなタレントのコンディションを見極める方法がある。
その方法とは、「ディメンション」だ。
これは一発ネタで急激にブレークしたタレントには特に有効な方法だ。
ここでいうディメンションとは、「面」だ。人間は、様々な面を持っている。芸もそのタレントの一つの面であるが、それ以外にもそのタレントは様々な面を持っているはずだ。例えば性別、あるいは年齢、容姿、趣味、家族構成、出身地、性格、友人関係、経済力、好きな食べもの、洋服の趣味、性癖、楽器の才能、絵の下手さ加減、歌のうまさ下手さ、漢字が読めない、足が遅い、足が臭い、妻が美人、動物が好き、卵の殻を割るのがうまい、卵の殻を割るのだけはやたらうまい、人生を重ねてきた人間ならこのような様々な面をいくらでも持っているはずだ。ブレーク中のタレントは、テレビ番組に露出できているこのチャンスを生かして当てた芸とは違う別のディメンションを見せるのだ。「私って、料理の味が全然わかんないんですよぉ」、「うそやろ、そんなことあらへんやろ」なんでもいい、広告主側のきっかけは意外な場所にあるものだ。チャンスを与えてくれた一発芸頼りになるのではなく、人間としての幅を残すのだ。そうしないと、その芸が鮮度を失った瞬間、あらゆるものが逆回転を始めることになる。
たとえば、38位。前年比が64%、前期比も92%。昨年からのスコアは半分近くになり、前期比も1割近く落としている。CMも無い。38位の場合、今期のスコアが575で前年比が64%ということは、前年のスコアがどれだけ高かったかお分かりだろうか。単縦計算で、 888。これは今季のお笑いタレントランキングでは余裕で1位のスコアだ。
いかがだろう。当てた時の急上昇のスピードも凄いが、旬を過ぎた時の引き潮の早さもまた強烈ではないだろうか。
広告主側はいち早く売れ筋のタレントをCMで使うかもしれないが、起用のタイミングを間違えると寒いことにもなる。流行の恐ろしさだ。沸騰するのも早ければ、冷めるのも早い。特に広告の場合、旬を外すとかえってマイナスになるだけに、一度退いた手はなかなか帰ってこないのだ。
無名の新人が極端に言えば一夜にして大スター、と思っていたらナンバーワンがあっという間に消えていく、いつの間にか見なくなる。まるでジェットコースターのようなショービジネス界の怖さだ。
そんな中でしっかり定着していくのは、番組露出だけに頼らない、CM、バズを含めたバランスが必要だ。これを長期にわたって維持してくれるのが、そのタレントの持つ様々なディメンションだ。
テレビに出ること、バズになること、CMに出ることは、実は微妙に違う。
特に長くタレントであり続けるには、初期の勢い、注目度だけでは無いそのタレントの人物らしさが現れたディメンションが必要だ。人々はそこに愛着を感じるのだ。
お笑いタレントの場合、デビューは一発でいけるかもしれない、色ものキワモノで一瞬だけ一位になれるかもしれない、だがそこからは、注目されているスターたちの中からさらに自分を選んでもらう必要があるのだ。素人から抜け出すのと、スターの中から抜け出すのとでは全然違う。
それが生き残るタレントと、消えていくタレントの違いだ。
タレントランクのトレンドとスコア構成は、そんなタレントたちの違いを私たちに教えてくれる。
関連記事
著者:梅田仁 | Jin Umeda
ライフログ総合研究所(Life Log Lab.)所長
iPhone、iPod、iTunes、Mac、Apple TV、Apple Storeのシニア・マーケティング・プロデューサーとして、Apple(AAPL)を時価総額世界一のブランドに育て上げることに貢献。iTunesで取り扱う内外のエンターテインメント・コンテンツ、アーチストの需要トレンド、視聴者の嗜好パターン分析を通してプラットフォームメディアビジネスにも精通。2013年、ライフログ総合研究所を設立、TV Rank、Talent Rankサービスを展開中。著書:「売れない時代に売る新常識」出版文化社、2011