社内インタビュー:TV-CMメタデータチーム@水戸データ入力センター
こんにちは!いつものメタラボ記事では、TVメタデータの紹介や、TVメタデータを集計・加工した分析記事の紹介がメインですが、今回は趣向を変えまして、TVメタデータ作成の最前線であるエム・データのデータ入力センター(茨城県・水戸市 ※以下「水戸DC」)から、TVメタデータ作成における要点や苦労話、最新のトピックなどを、メンバーへのインタビュー形式にてお届けしたいと思います!その第一回目は、TV-CMメタデータチームを引っ張っていらっしゃるSさんとHさんのお二方に、インタビューをさせていただきました。
――Sさん、Hさん、よろしくお願いいたします。
S・H「よろしくお願いします」
※恥ずかしがりやなので顔とお名前は伏せています。
――Sさんは元々エム・データで入力スタッフとして入社されて、そこからチームの運用管理デスクとしてTV-CMメタデータチームを見る立場になられたんですよね。
S「はい。最初はTV-CMではなく番組シーンメタデータ(番組の放送内容をテキスト化・サマライズ化したデータ)チームのスタッフとしてデータ入力業務を行っていました。また、TV-CMメタデータ作成のヘルプも行っていたことから、TV-CMメタデータチームの運用管理デスクになりました」
――Hさんは2020年に転職で入社されたんですよね。入社して1年経ちましたがいかがですか?
H「TV-CMメタデータを作成するのに必要な細かいルールなど、いろいろと覚えることがあって、最初は何が何やらという状態だったのですが、Sさんや水戸DCの皆さんのおかげで運用管理業務をこなせるようになってきたのを感じています」
――ふむふむ、エム・データのTVメタデータには色々と種類がありますが、中でもTV-CMメタデータが複雑だったりするのでしょうか?
S「ルールやデータ自体が複雑というよりも、他のTVメタデータよりスタッフの作業環境のシステム構造が複雑だったりするので、最初に覚えることが多いですね」
H「そうですね、最初に慣れてしまえば!」
――読者のなかにはご存知ない方も多いので伺いますが、TV-CMメタデータってそもそもどういうものでしょうか?
S「簡潔にいいますと、TV-CMで放送された内容をテキストデータ化したものになります。いつ、どの局のどんな番組で、どこの企業の、どの商品やブランドが登場し、誰が出演して、どのような映像(シチュエーション)でどういった情報(テロップ)が流れたのかといった情報を、放送1CM単位でテキストデータ化してお客様にお届けしています」
■水戸DCでどうやってデータ化しているの?
――では具体的に水戸DCの入力スタッフは、どのようにデータを作っているのでしょうか?
S「TV-CMメタデータは、関東・中京・関西・BS局が対象ですが、地上波民放キー局で一日に約300素材、1エリア約4000本のTV-CMをデータ化しています。これらすべてを人の目で確認しデータ化するのは大変なので、TV-CMの自動認識システムを用いています」
――さっき言ってた、最初に覚えなきゃいけないシステマチックな作業環境のところですね。
S「そうですね。自動認識システムは、テレビ放送を番組本編とTV-CMとに分けて、TV-CMだけを1CMの放送単位で切り出してくれます。TV-CMメタデータは、TV-CMの放送内容、いわゆる素材データ(BASE)と、TV-CMが何日の何時何分にどの局で放送されたのかの放送実績、いわゆる時点データ(LOG)に分かれるのですが、自動認識システムでは、TV-CMの音声情報と映像情報を解析して素材データを特定し、既に放送されたことのあるTV-CMと同じであれば、その素材データと時点データを自動登録します。今まで放送されたことのない新しいTV-CMの場合は、時点データのみを自動登録し、素材データは空の状態で登録します」
――それは便利そう。番組本編とTV-CMを自動で分けてくれる技術というのは、一般利用されているレコーダーでよく録画された番組がチャプターごとに分けられるのと同じ仕組みですか?
S「これはエム・データ独自で使っているシステムなので一般利用されている仕組みと同じかは厳密にはわからないですが、もしかしたら同じような技術を使っているかもしれないですね。ただこのシステムも100%正解というわけではなく、特殊な放送形態のTV-CMなどほんの一部を取り逃してしまったり、また間違えたりするので、その確認と、必要であれば補填や修正を行います。また、新しいTV-CMの場合は時点データのみが自動登録され、素材データは空の状態なので、その素材内容を手動で作成・登録します。入力スタッフの主な役割はこの2点で、人の目と手でしっかり対応することになります。」
■人力で作業を行うメリットって?
――自動認識技術と人力のハイブリッドですね。色んな技術ベンダーさんたちと実証実験を試している私たちですが、まだまだ完全にTVメタデータの自動生成(AIや機械学習、ディープラーニングなど)をすることは難しそうなのでしょうか?
S「現在の最新技術動向ですと、部分的には自動化が出来てきていると聞いています。ですが、我々がお客様から求められているレベルですと、まだまだ100%の自動化というのは難しい状況です。TV-CMでは、映像は同じなのにテロップが一部分だけ異なっているといった、マイナーチェンジしているものが多く、例えばペット用食品のTV-CMで、音楽やカット割りは一緒なのに映っている動物が微妙に変わっていたりとかですが、そのような細かな違いを正確に識別するには自動認識技術だと難しいです。さらに最近では、特殊な放送形態や特殊な秒数のTV-CMも多く登場しているので、そのようなTV-CMへの対応、生CMやプロダクトプレイスメント的な特殊なインフォマ―シャル、PinP(※1)、6秒や300秒といった幅広い秒数のTV-CMも、自動認識技術と人の手によるデータ作成、つまり機械と人のハイブリットなので、柔軟な対応ができています」
――何を自動化に頼って、何を人が作業すべきか、というのを熟知している、というのもエム・データの強みかもしれません。
H「YouTubeなどで出しているCMを地上波で流す、ということも増えていると思いますし、あとは先程のPinPのような、本編との境がない、番組と一体型でそのままTV-CMに切り替わるようなものも試験的ではあるでしょうが、今後ますます増えてくると思います」
S「テレビ局さんや広告主さんも試験的にいろいろ試されていて、バリエーションが増えてきたように思います。先程の、秒数や放送形態が特殊なケースもそうですが、そのTV-CMの内容についても、お客様のご要望によっていろいろと追加・加工をするなどのカスタマイズ的対応も、人手が介在しているからこそ、きめ細やかに対応できるのも強みです」
※1:「PinP(ピクチャーインピクチャー)」テレビ番組本編進行中に画面下部にワイプのようかカタチで挿入される特殊なTV-CM手法のこと。
■最近新しく始めた取り組みは?
――なるほど。日々テレビ局さんが取り組まれる新しい放送内容に合わせて、エム・データも新しい提供方法を考えていかなければならないということですね。たとえば最近新しく始めた取り組みってありますか?
S「TV-CMのメタデータ作成体制が24時間体制になりました。これまでは夜間に放送されたTV-CMの新規データは、翌朝出社したスタッフが作成してデータ化していましたが、24時間体制になったことによって、深夜であってもTV-CM放送後すぐにデータをお客様へお届けすることが可能になりました(リリース:https://mdata.tv/info/20210122_01/)」
――これはお客様からのご要望があってのご対応だったのでしょうか?
S「そうですね、やはりTV-CM放送後すぐに実績を把握し分析されたいお客様が多く、ニーズが高まってきたので、ようやく実現できました。速度を重視される声は強まっています」
H「社内的な話になりますが、勤務体制を夜帯に変更してくださったスタッフもいましたし、スタッフの協力がなければ実現できないことでした。このコロナ禍により部分的に在宅勤務化したことも、夜帯の出勤希望者を募る上で後押しになりました」
――確かに。その状況の変化は大きいですね!
H「幸い在宅勤務ができる業務内容なのでよかったです。現在、TV-CMメタデータチームでは約9割のスタッフが在宅で業務を行っているのですが、水戸DCに出社して業務する環境と同じように在宅でも業務いただいているので、24時間体制も順調に稼働しています。在宅化でスタッフと顔を合わせる機会が減ってしまったのですが、チャット等で業務進捗の共有などコミュニケーションには気をつけています」
■今後の展望
――今回の24時間体制により、スピードという面がクリアされたわけですが、次にTV-CMチームが目指すところって何かイメージありますか?
S「色々ありますが、たとえば現在インテージ様と一緒に全国CMマスタの取り組みをさせていただいています(リリース:https://mdata.tv/info/20181018_01/)。お客様からは様々なリクエストをいただいていますので、これらについては、インテージ様とご一緒に、より進化・発展をさせていきたいです。また、TV-CM出稿企業に対して、証券コードなどの付帯情報の付与や、社名変更や合併などの企業変遷を一元化できるような情報の付与を、これから構築していく新しいデータ「エム・データ企業マスタ」と連携して進めていくプランがあります。勿論、既存データの拡充も常に求めらていることで、現状に満足せず、お客様にとって何が使いやすく価値あるデータなのかを、日々、思案・研究しています。
■お仕事を通じて嬉しいこと
――最後に、お二人がお仕事を通じて嬉しいこと楽しいことは何でしょうか?
H「エム・データでは定期的にTV-CM出演者ランキングや、TV-CM企業ランキングを発表していますが(https://mdata.tv/info/?c=ranking)、このランキングを作るためには一件一件スタッフがチェックしてくれてできたデータが必要で、それがひとつひとつが形になると嬉しいです。あとはこのランキングがテレビで紹介されているのを見るのも嬉しいですし、やる気に繋がりますね!」
S「自分はスタッフが作業する入力インターフェースの改修や仕組みを考えるのが楽しいです。現場が使いやすく感じて、働く環境やデータの品質がより良くなっていくと嬉しいですね。スタッフから『作業しやすくなった!』と言ってもらえると喜びもひとしおです!!!(笑)」
――うんうん、それって個々のパフォーマンスを集約してチームビルディングして成果達成していく時に、根本的に重要で必要な考えや想いですよね。データ作成の現場のいろいろや皆さんの想いを知ることができてよかったです。
SさんHさん、インタビューを受けてくださり、ありがとうございました!
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著者:荒川 楓 (Arakawa Kaede)
株式会社エム・データ
メタデータコーディネーター/広報チーム。大学在学時にテレビ局・映画配給会社でアルバイトをした後、映画業界で企画・マーケティングなど。
M Data Co.,Ltd.
A Metadata coordinator and in charge of public relations. I used to work in the movie industry and TV stations.
Visit: Canada, China, France, Korea and UK