劇場公開orネット配信?映画のTV-CM事例

前職で興行会社(映画館)の来館者予測分析を行っていたこともあり、このコロナの状況下、コンテンツホルダーは映画館への来館を訴求するのか、それともネット配信に誘導するのかが気になるところです。そこで、今回は劇場公開とネット配信のTV-CMの出稿状況を比べて見てみようと思います。
 

使用したデータ
・関東で放送されたTV-CMデータ(エム・データ)
・新型コロナウイルス新規陽性者数の推移データ(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/open-data.html
 

定義
・劇場公開:
映画館での鑑賞を促すTV-CM
・ネット配信:
アマゾンプライム、ディズニープラス、NETFLIX、Hulu、U-NEXTの訴求TV-CM
 

まずは2020年1月から直近2022年3月までの、新型コロナウイルス新規感染者数の推移を見てみましょう。

 

後ほど使用するTV-CMデータは関東圏での放送データになるので、コロナも関東圏(赤線)と全国(青エリア)を比べてみましたが、ほとんど比率に差はなさそうですので、エンタメは国内全体のセンチメントが大きく影響すると考え、エリアを限定せず全国のデータを使用していこうと思います。
この新型コロナウイルス新規感染者数のデータに、劇場公開とネット配信のTV-CM放送回数のデータを加えてみます。

 

このようになりました。最初の緊急事態宣言が行われた2020年2クオーター目(4~6月)のみ、劇場公開が前期よりも大きく数を減らしていますが、それ以外は継続してネット配信よりも劇場公開TV-CMの方が放送回数が多かったようです。
続いてより詳細に、週ごとに見てみましょう。

 

上段のグラフが先ほどのグラフの週まとまり推移で、下段のグラフが各週どちらの放送が多かったのかのパワーバランス表(それぞれのCM量を比較し差分量でグラフ化)です。
やはり先ほども見た2020年4~7月にネット配信の勢いが強まっているのが目立ちます。そして更に気になるのは、それ以降4つの新型コロナウイルスの波が始まる前に増えているネット配信のボリュームです。

 

本来であれば新型コロナウイルスが流行している時期は、劇場公開よりもネット配信に誘導し、収束の兆しが見えた時に劇場公開の訴求にシフトチェンジをするのが良いかと思いますが、それが逆転してしまっているように見えます。
また、ネット配信のボリュームが多くなっている年末等の長期休暇は劇場にとっても書き入れ時ですが、劇場公開側のそれよりネット配信側のボリュームは圧倒的です。
劇場公開のスケジュールは何ヶ月も前から決まっており、作品の規模やそのタイミングによってCMの打ち方や広告費の掛け方が異なるので難しいでしょうが、今後コロナのような社会的問題と付き合っていく際には、このようなデータを活用しながら、劇場公開とネット配信のバランスが上手く機能していくことが理想的だと思います。また、これは映画業界に限らず、アウトドア型インドア型の両面性を持つ業界全てに言えることのように思います。皆さんの業界でも、是非当てはめてみてください!


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