メタデータと著作権

 

※ここで書く内容は、あくまでも個人の意見です。私が属する会社や団体の考えではありませんので、ご了承ください。

DSPやDMPを利用した広告手法が注目されています。

例えば、DSPとDMPを繋ぐデータも広い意味でメタデータと言えます。また、今まで以上にDSPの広告効果を向上させるために、何を指標として広告と閲覧者を繋ぐかが課題となっています。そして、DMPを所有するデータディストリビューターにとっても、自社のデータを積極的に利用してもらうためには、どのようなメタデータを作成するかが重要な課題です。

全てを自社で作成したデータからメタデータを作成する場合は問題ないのですが、第三者が作成したものをベースにメタデータを作成する場合は、著作権を含めた様々な権利に抵触していないかに注意する必要があります。ここでは、メタデータの生成と流通に関する様々な権利(商標権やパブリシティ権など)のなかでも、著作権に絞って書かせて頂きます。また、メタデータの形態はテキストデータで、インターネットを介した利用を想定しています。
 
 

メタデータとは

メタデータの意味は広く、様々な解釈をされていますが、ここでは「あるものを説明するデータ」や「あるものとあるものを繋ぐためにのデータ」という解釈で書かせて頂きます。当社で作成しているメタデータを例にすれば、「TV放映の内容を要約したテキストデータ」や「TVで紹介された商品を、ECサイトで紹介するための便利なデータ」ということになります。
 
 

著作権とは

まず、著作物とは、著作権法によって「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と定められています。

この著作物を創作した者が著作者となり、著作権によって様々な権利(例えば、複製する権利など)を専有することになります。この権利は、特許権などと違って、権利を取得するために申請などする必要もなく、創作と同時に自動的に発生する権利です。また、この権利は、他者へ譲渡することや、利用の許諾を与えることができます。言い換えれば、他者が創作した著作物を、著作権の譲渡や許諾なしに利用することができないということです。

更に、ここが少し複雑なのですが、著作権には財産権と人格権(正確には著作者人格権といいます)があり、著作権の財産権は前述の様に他者へ譲渡することができるのですが、著作者人格権については、他者へ譲渡することはできません。著作者人格権には、公表権、氏名表示権、同一性保持権の3種類があり、これは譲渡できませんので、許諾なく著作物の公表や著作者の氏名表示、基本的に勝手に作り変えや修正などができないのです。
 
 

著作物に該当し得るメタデータ

作成したメタデータが、次に該当する場合は、著作物にあたると考えられます。この場合、自ら作成したメタデータを他者が無断で利用している場合には、権利主張ができます。

・基になるものから創作したもの
これは、真似をしたレベルではなく、基になるものを参考にし、思想又は感情を創作的に表現したものです。

・基になるものから選択の仕方に創作性があったり、並び方に創作性があるもの
例えば、50音別電話帳から職業別電話帳を作ることなどが該当します。

・基になるものを要約したもの
これも、要約したものが思想又は感情を創作的に表現したものである必要があります。

・メタデータがデータベース化されたもの
データベースの項目1つ1つが著作物でない場合でも、全体で体系化されており、まとめられていれば著作物と考えられます。
 
 

メタデータを作成、流通させる際の注意点

まずは、メタデータ作成時の注意点です。メタデータは、基本的に基になるものがあり、「それを説明」したり、「他のものと繋ぐ」ために作成する場合が多いと思います。「基になるもの」があるということは、それに何らかの権利(著作権以外の権利を含む)が付帯している場合があり、その場合は権利者から権利を譲渡してもらうか、利用するための許諾を取る必要があります。勝手に利用してしまうと、著作権侵害でクレームを受ける可能性がありますので、注意が必要です。詳細は省略させて頂きますが、著作権には次の権利があり、名称でそれとなく想像できるものもありますが、しがたいものもあります。詳しく知りたい方は、こちらの第二十一条以降をご覧ください。複製権、上演権及び演奏権、上映権、公衆送信権、口述権、展示権、頒布権、譲渡権、貸与権、翻訳権、翻案権、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利。特に、メタデータ作成時には、複製権、翻訳権、翻案権、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利には注意が必要です。

また、先に書かせて頂いた著作者人格権にも注意が必要です。例えば、複製、翻案権、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利の利用許諾を受けていたとしても、著作者人格権に関する許諾なく手を加えてしまうと、著作者人格権の同一性保持権に抵触することがあります。少しメタデータからイメージが逸れてしまいますが、森進一さんの「おふくろさん騒動」などがこの例に該当します。作詞家の川内康範さんが作詞した「おふくらさん」の歌詞に勝手に台詞を足したとして訴えた事件です。

次に流通させる場合の注意点ですが、実は注意が必要なのは、ほとんどが作成時でして、そこをクリアすれば流通時に問題が起こることは少ないと思います。敢えていうと、公衆送信権の侵害でしょうか。例えば、権利者から複製権の利用許諾を受けていた場合に、メタデータの一部に利用許諾を得ているものの複製を利用していたとします。勿論、複製権の利用許諾を受けていますので、複製に関する問題はありません。ただ、それをWebサーバにアップロードするためには、公衆送信権の利用許諾も必要になります。一般的には、著作権の利用許諾契約を結ぶ場合は、著作権全ての利用契約を結ぶことになりますので、それほど気にする必要はないかと思います。

余談ですが、著作権の譲渡を受ける場合は、「全ての著作権を譲渡する」と契約書に書かれていても「二次的著作物の利用に関する原著作者の権利」は譲渡の対象ではないと推定されます。二次的著作物を作成する場合は、契約書へ「譲渡対象は、著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む」旨の記載が必要です。また、「著作者人格権は行使しない」旨の記載もあった方が良いでしょう。

慎重になり過ぎてしまうような内容になってしまいましたが、実際には、メタデータの作成や流通を行う際に、著作権を侵害してしまうケースは少ないと思います。とは言え、著作権を理解した上で行うに越したことはありませんので、ご参考になれば幸いです。


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