「保育園落ちた日本死ね」をテレビはどうとりあげ、国会の議題になったか。
2月15日にこんなブログが世に出たのはご存知でしょうか。
「保育園落ちた日本死ね」(はてな匿名ダイアリー)
いささか強烈なタイトルですが、保育園に落ちて子どもを預けられないことへの絶望を書いています。匿名ダイアリーなので誰が書いたかはわかりませんが、またたくまに拡散され、ネット上で大きな話題になりました。
さらにその後、「ネットで話題になった“日本死ね”ブログ」ということでテレビ番組でも取りあげられて多くの人の目にするところになりました。そしてついに2月29日に国会で取りざたされ安倍首相のもとにもブログが届けられたのです。
「保育園落ちた日本死ね」ブログで激論 安倍首相「匿名である以上確かめようがない」(産経デジタル)
名もない母親の書いたブログが、二週間で首相の面前に届いたことになります。非常にユニークで現代的な現象だと思います。そこでメタラボでは、テレビでどんな取りあげ方がされたかを、メタデータ検索により検証してみました。このブログを取りあげた番組は以下のようなものでした。
3月1日時点でこれだけに上ります。このあとも続きそうなのですが、すごい数です。
さらに細かく見ていくと、いちばん最初に登場したのはNHK「NEWS WEB」で、ブログが世に出た翌日、2月16日に早くも出ています。ただ、twitterで頻出したキーワードを紹介する「つぶやきビッグデータ」の中で登場したので本の数秒間でした。
ネットでの話題を元に取材して取りあげたのは、2月17日のTBS「NEWS23」。5分40秒使い、識者への取材などもあるきちんとした取りあげ方です。そしてTBSではその後も、週末の「新・情報7daysニュースキャスター」「サンデージャポン」「アッコにおまかせ」などでも取りあげています。最初の週に火をつけたのはTBSと言ってよさそうですね。
翌週は、朝のワイドショーが次々に取りあげています。22日にはCX「とくダネ」が3分間ほど、23日には日テレ「スッキリ!!」が20分も扱いました。26日にはテレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」で15分取りあげた上、夜の「報道ステーション」でも10分間を割いて扱っています。国会に運んだのはこれが決め手かもしれません。
ではネットでの話題はどう推移したのか。Twitterのデータも見てみましょう。データセクション社にお願いして、「日本死ね」を含むTweetを検索してもらいました。10%抽出の結果をグラフにしたのがこちらです。
先ほどのリストのテレビ番組を、円で表示してみました。円の大きさは大ざっぱに時間数の長さを表現しています。
2月17日に大きな山ができていますね。話題沸騰になったわけですが、それを見てすぐに取材したTBSの初動の早さは見事です。さらに翌週、ワイドショーが取りあげるたびに最初ほどではないけど山ができており、入念な取材で長時間取りあげたことで沸騰した話題の温度を熱いまま保っていたと言えそうです。
テレビのデータを元に、例えばtwitterのデータと掛け合わせることで、いろいろなことがわかりますね。ツールを駆使したり別のデータも投入すれば、もっと複雑なことも解析できますよ。
※この記事は境がYahoo!上に書いた以下の記事を元にしています。
「保育園落ちた日本死ね」ネットとテレビで響きあい国会に届いた”絶望”
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著者:境 治 (さかい・おさむ)
コピーライター/メディアコンサルタント
株式会社エム・データ顧問研究員
東京大学文学部卒。コピーライターとしてフリーランスで活動した後、
ロボット、ビデオプロモーションを経て、13年7月から再びフリーランス。
ブログ「クリエイティブビジネス論」はハフィントンポストなどに転載されている。