「 #保育園落ちたの私だ 」の盛り上がりをTV Rankで浮き彫りに
前回の記事『「保育園落ちた日本死ね」をテレビはどうとりあげ、国会の議題になったか。』の続きを書いてみます。
前回は「保育園落ちた日本死ね」ブログが2月15日にはてな上で公開されてから2月中のツイートの動きとテレビ番組の登場数の相関性を見てみました。
そこで今回はさらにその後の動きを追ってみましょう。そして今回の記事では開発中の新しいTV Rankによる分析画面をお見せします。
これまでのTV Rankはエム・データが生成するTVメタの中のCMデータを多様に抽出して見せるものでした。今回はテレビ番組情報を自在に取り出す開発中のTV Rankの上位バージョンを使ってみます。
まず最初の画面をみてください。ここでは、2月15日から3月21日までのテレビ番組の中から、「保育園落ちた」で検索したものを棒グラフで表現しています。さらにデータセクション社からいただいた「保育園落ちた」を含むツイート数を折れ線グラフで下につけています。
後半で番組の数もツイート数も一気に増えています。途中で局面に変化があったのです。2月29日に山尾議員が国会でこの件について質問したら首相が「匿名では対処できない」と答え、「誰が書いたんだ」と野次が飛び交いました。その様子がテレビで伝えられると話題として大きくふくらんだのです。
もうひとつ別の画面を紹介します。TV Rankではテレビ番組の分析を多様に表現できます。ここでは、「保育園落ちた」を取りあげた番組の分類がひと目でわかります。
これを見ると、前半はワイドショー、後半はニュース番組で取り上げられたことが一目瞭然です。つまり、最初は「ネット上で話題になっている」こととしてワイドショーで取りあげられていたのが、国会質問以降は政治の話題としてニュース番組が扱うようになったのです。
ひとつの話題が、最初はシンプルに同じ境遇の母親たちの間で共感され、テレビもそこを取りあげていたのが、別の要素が入ることで社会全体の興味を引いていったことがよくわかるのではないでしょうか。
この例はあくまで、誰が仕掛けたわけでもないテーマが偶発的に広がった過程を示していますが、自分たちで世の中に話題を提供する際にも参考になりそうです。そして、そこではネットとテレビの両方をうまく相乗させるとよいことが感じられます。
そして大切なのは“共感”だという気もします。メディアを駆使して世の中を操ることなんてできません。でも、思いがあれば、やり方次第で広がっていくのだろうと思います。大切なのは、人の強い“思い”であり、それが共感を生めば広がっていくこともできるのだと思います。
関連記事
著者:境 治 (さかい・おさむ)
コピーライター/メディアコンサルタント
株式会社エム・データ顧問研究員
東京大学文学部卒。コピーライターとしてフリーランスで活動した後、
ロボット、ビデオプロモーションを経て、13年7月から再びフリーランス。
ブログ「クリエイティブビジネス論」はハフィントンポストなどに転載されている。