新型コロナウイルスによるTV-CMクリエイティブの変化推移
新型コロナウイルスによって様々な業界が変容を余儀なくされ、テレビ番組や広告の在り方もまた大きく変化しています。この数ヶ月の間にTV-CMのクリエイティブはどのように変化していったのか、色々ある中で個人的に気になったものの傾向や特徴をまとめました。
2月~3月
関東地上波キー局で放送したTV-CMの中で、一番早い時期に放送された「新型コロナウイルス」についてのものは、2月10日から放送の「東京都」による「新型コロナウイルス感染症に関するお願い」でした。
さらに東京都から遅れること1週間、「厚生労働省」が受診の目安を発表すると共に、「新型コロナウイルス感染症に関するお願い」を放送。「東京都」のTV-CMクリエイティブが、テキスト静止画のみの簡易的な注意喚起の15秒CMなのに対し、「厚生労働省」のTV-CMクリエイティブは「飛沫感染」「接触感染」「人混み避ける」「手洗い」などのイラストが入った30秒CMになっていました。
その後3月に入ると、「幸楽苑」が開催を予定していたアーティストのライブイベントの告知CM内に、「※新型コロナウイルスの感染拡大状況により、イベントの開催を中止または変更させていただく可能性があります」の記載を入れて放送。エンタメ関連事業の先行きがまだ不透明だった状況が感じられます。
3月20日には、今やビジネスでの利用や「Zoom飲み」というワードが急速に世間に浸透した、ビデオ会議ソフト「Zoom」のTV-CMが放送されました。
ちなみに、日本での広告事情とは必ずしも一致するとは言えないかもしれませんが、サービス提供の「ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ」の米国株価は2月中旬から上昇基調にあり、2~5月のナスダック総合指数の高値と安値をグラフで合わせると、世間の株価暴落ムードに対してズームが絶好調!という時期のTV-CM出稿だったことがわかります(株についてはあまり詳しくないので、参考までに)。
4月~5月
4月に入ると政府が7都府県を対象に緊急事態宣言を発出し、徐々に「マスク着用」「持ち帰り」「テレワーク」などのTV-CMが放送されます。
- 「ジャパネットたかた」…「マスク着用方法」を訴求
- 「マクドナルド」…「持ち帰り」を訴求
- 「アパホテル」…「テレワーク応援プラン」を訴求
- 「YouTube」…「#家で一緒にやってみよう」を訴求
- 「東京モード学園」…「オンライン入学相談」を訴求
- 「大正製薬」…八村塁らスポーツ選手によるメッセージCMを放送
政府が緊急事態宣言を全国に拡大してから一週間後の4月24日、3大キャリアである「エーユー」「ソフトバンク」「NTTドコモ」が揃って「店舗営業の案内」を放送しました。3大キャリアの放送以前も既存素材に店舗営業についての案内を追加して放送することはありましたが、店舗営業の案内を主体に据えたTV-CMクリエイティブ、しかも業界で揃って放送を開始するところにはかなり特徴的な事例が見られます。
ゴールデンウィーク(ステイホーム週間)に入ると、「ヤマト運輸」「ドミノピザ」などが「感染拡大防止のための配達案内」を放送。また、「スカパー!」「WOWOW」「ヤフー」などが「ステイホーム」を訴求しました。
なお、「ステイホーム」という言葉がテレビ番組で初めて使われたのは、3月30日(月)の各局の帯ニュース番組で、「新型コロナウイルス感染拡大で日本よりも深刻な状況のヨーロッパサッカーリーグでプレイする日本代表の吉田麻也、香川真司が日本のファンへ強く「ステイホーム」と訴えた。」というような内容でした。(参考: https://news.yahoo.co.jp/articles/d48aa47c4dbaaf94cc1d5cf6abe971e575abb220)
5月14日に緊急事態宣言が39県で解除されると、4日後には「東宝」が7月に公開の新作映画「今日から俺は!!劇場版」の予告編の放送を開始しました。ロードショーのTV-CMは2019年2~5月の放送回数が8,209回だったのに対し、2020年2~5月は4,118回と、約半数にまで落ち込んでいます。新作映画の告知は、公開延期が続く中での久しぶりの明るい兆しと言えるでしょう。
緊急事態宣言が発出されてから1ヶ月が経つと、「RIZAP」が「自宅太り解消」を訴求するため、自宅でできるダイエットブックを配布し始めました。
6月
6月に入り「東京アラート」が発令されると、「エーユー」「マクドナルド」が、これまでに実写でシリーズ化されていたクリエイティブへの出演キャストを声優としたアニメCMを放送しました。また、「UQコミュニケーションズ」では過去に放送したことのあるTV-CM素材に、出演キャストが新たに録音を行い、新規クリエイティブとして蘇らせました。
様々な企業によるTV-CM制作の工夫が見られます。
まだまだ予断を許さない中ですが、エム・データ東京オフィスでは引き続き原則在宅勤務を実施しております。TVメタデータは水戸データセンターで一部在宅勤務を取り入れながら休まず生成中ですので、テレビのデータで気になることがございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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著者:荒川 楓 (Arakawa Kaede)
株式会社エム・データ
メタデータコーディネーター/広報チーム。大学在学時にテレビ局・映画配給会社でアルバイトをした後、映画業界で企画・マーケティングなど。
M Data Co.,Ltd.
A Metadata coordinator and in charge of public relations. I used to work in the movie industry and TV stations.
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