【動画元年2014】その1)動画元年は、テレビ局が牽引する。そこにはテレビと視聴者の新しい関係がある。

今年、2014年は動画元年だ!と言われます。

これに対して、ああまたですか?動画元年って何度目でしたっけ?と揶揄する人もいますね。実際、インターネットが登場して以来、何度も言われて何度も形にならなかったのがこの「動画元年」です。でも2014年はあとから振り返ると、ああ動画元年だったね、と言われる年になりそうです。

何しろ、日本の地上波テレビ局がネットで番組配信をはじめたからです。

テレビ局が番組をネットで流すこと。それ自体は、「第二日本テレビ」に限らずいろんな動きがこれまでもありました。ただ、今年違うのは、地上波で放送された、しかもゴールデンタイムのメジャーな番組を、放送後に無料で配信しはじめた、ことです。

ご存知の通り日テレが年明けから「いつでもどこでもキャンペーン」をスタートし、民放連・井上会長の「民放5局が共同で見逃し視聴の無料配信を行う」構想を発表した後、TBSが「無料見逃しキャンペーン」を開始しています。あくまで一部のドラマやバラエティですし一週間限定ですが、放送後の番組が無料で視聴できます。

これまで、番組の無料配信は様々な理由で、無理だと言われてきました。それが、ここへ来て意外にあっさり実現してきたのです。無理だと言われてきた理由は、視聴率が落ちるとか、演者さんの側の拒否反応や、スポンサーがなんて言うかわからないとか、乗り越えられそうにない様々なものでした。ですが、これらが意外とやってみるとクリアできたのでしょう。案ずるより産むが易し。メディアをめぐる状況が大きく変化し、みなさんの意識や考え方もどんどん変わっていっている証しですね。

2014年は動画元年だ、という時に、テレビ局の配信が軸になるのは重要なことだと思います。これまでの動画元年だ!が空振りになっていたのは、ネットだけで動画の動きが起こったからではないでしょうか。テレビが動いて初めて、動画元年になる。べつにテレビがえらいのだと言いたいのではありません。テレビとネットが一緒に動くから大きな動きになる。そこがメディアのとらえ方で非常に重要なのだと思います。

テレビが無料配信をはじめるとなぜ動画元年になるのでしょうか。有料配信の動きはこれまでも続いていました。そこと何が違うのでしょう。

ひとつには、無料だといきなりハードルが下がります。有料配信だとなかなか、検索してまではやらなかった。無料なら、どこでやってるの?と積極的に探すでしょう。(だから探しやすいガイダンスは重要です)

あるいは、いままでは検索して出てくる違法な無料動画を見ていた人も多かったでしょう。これ、違法なのかな、ホントはいけないのかな、と思いつつ、検索で出てきた動画を見てしまう。そこにつきまとう後ろめたさを感じる必要がないのは大きいです。

それから、有料配信との違いは、広告がつくことです。広告収入を得ることができる。スポンサー側からすると、ネットでもCMを流しやすくなる。これにより、ネット動画がマーケティングの舞台になり大きな経済活動の場になる。このことにも大きな意味があります。

ネット広告の中でこれまでのバナーが効かなくなってきた。バナーブラインドネスと言われたりしますが、視野にバナーがあっても意識から外してしまう見方ができている。その上、スマホが主流になるとバナーの場所そのものがなくなっている。むしろ、動画広告の方が見てくれる。

だからスポンサーはネットで動画広告を出したいのに、日本ではYouTubeしかない。アマチュアの作ったクオリティの低い動画にCMをつけたくない。わが社のCMをつけるに足る、まっとうな動画がほしい。そういう動画が流れる場があれば広告費を出しますよ。

そんなニーズがある中で、テレビ局が無料で番組配信をはじめたことは大きいと思います。一気に活性化する。インターネット登場以来、待ち望まれていたことがようやく実現しようとしています。

これからテレビは、「どこにでも、いつでも存在するメディア」になっていくのでしょう。図にしてみると、こんな感じです。

なんてことないようで、これは大変化です。テレビの次の姿ですね。もうテレビはテレビと言えないのかもしれない。だって、テレビとは受像機の名前、あるいは放送で番組を送信するシステムの名前ですから。図には「TV」がスマホの中に入っているけど、スマホの中で流す番組をテレビと呼んでいいのかわかりませんね。でも、めざすべきはそんな姿であり、そこには意外に未来があります。生き残るというより、もう一度羽ばたく可能性さえこの図にはあると言えるでしょう。

もうテレビ局と視聴者の関係はこれまで通りではなくなる。そしてそんな状況でこそ、TVメタデータの役割が出てきそうです。

ということで、これからしばらく、動画元年について書いていこうと思います。続きを、どうぞお楽しみに!


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