【2023-2024 TV-CM白書】第6回「ブランドランキング」〜優良銘柄はこれでわかる!
東証上場全銘柄のTV-CM利用状況をまとめた「2023-2024 TV-CM白書 – 東証上場銘柄編」6回目は、銘柄評価を行う上で最も重要な指標の一つとなる「ブランドランキング」についてご紹介する。
「TV-CM白書」の最も有用なユースケースは、テレビの放送データをオルタナティブデータとして活用して上場銘柄の評価分析をすることができるという点だ。TV-CMは企業が多額の販管費を支出して行う重要な活動であり、その実施状況を分析することでTV-CMの実施に至る経営レベルの判断や各企業の置かれた直近のビジネス課題、その解決策などを後の決算書に結果だけが反映されるよりも前に知ることができる。
これまでご紹介してきた通り、東証上場銘柄のTV-CM実施状況をランキング形式で一覧するという手法は、まさに各上場銘柄の最新の販管費支出状況を決算書で報告されるよりも遥かに以前に逐一トラッキングし分析することができるという、アナリストにとっては禁じ手とも言える極めて魅力的な公開前情報収集活動になるのだ。
これらのランキングからは各上場銘柄が今期今現在どの程度TV-CMを実施しているのか、していないのかといった基本的な状況把握に始まり、前年比や前期比、あるいは他銘柄や関連指標との比較を通してその背景動静、異常値検出等といった個別銘柄のマーケティング実施状況や関連課題を端的に把握し続けることが可能となるのだ。そこから得られた評価軸や閾値に従ってスクリーニングを実施していけば、たとえば今期の強気銘柄、弱気銘柄を絞り込んでリスト化するといったことも可能となる。それはアナリスト独自の評価視点を手に入れるということであり、オルタナデータ活用のメリットはまさにここにある。
「TV-CM白書」を上場銘柄の評価に活用する手法についてはこれまで繰り返しご紹介してきた通りだが、今回は個別の銘柄評価からさらに一段階絞り込んだ、「ブランド」について検証を深めてみよう。
ブランドとは、TV-CMされている商品、サービスの名称のことだ。これまで見てきた「銘柄」は上場されている企業全体について、つまり証券コードが付与された上場銘柄そのものについてであったのに対して、ブランドはその銘柄が実際にTV-CMした商品・サービスそのものを指す。銘柄によっては複数のブランドをCMしているケースも多くあり、ブランド単位での集計を行うことによって、銘柄のレベルをさらに一段階深掘りした詳細分析をすることが可能となる。
たとえば、このシリーズの2回目、「TV-CM白書、登場!!〜CM銘柄ランキング」でご紹介した「銘柄ランキング」は、TV-CM実施規模の大小による東証上場銘柄そのもののランキングであり、CMの実施規模を表すCM指数が大きければそれだけCMの量が多い銘柄であるということで上位にランキングされていた。
シリーズの3回目、「TV-CM白書、登場!!〜CMデータで銘柄分析」ではこの「CM銘柄ランキング」の指標である銘柄ごとの「ブランド数」と「カテゴリー数」についてご紹介した。
ブランド数とはTV-CMされている商品・サービスのブランドの数であり、カテゴリー数とはTV-CMされている商品・サービスが属する商品カテゴリーの数がいくつあるのかということだ。
たとえば、キリンホールディングス(東証2503)の2024年1-6月期のCMブランド数は23、CMカテゴリー数は6であった。これはその期間にキリンHDがTV-CMしていた商品ブランド数が23あり、その23のブランドはそれぞれ6つの商品カテゴリーのどれかに属していた、ということだ。キリンHDの場合、1カテゴリーあたりのブランド数は単純平均で3.8、つまりキリンHDは2024年1-6月期に6つの商品カテゴリーに、カテゴリー平均3.8の商品ブランドを投入してTV-CMを行ったということを意味する。このキリンHDのケースでは、商品カテゴリーとはビール、酒類、飲料などになり、商品ブランドは晴れ風、一番搾り、生茶、ファイアなどとなる。
キリンHDのように多くの銘柄が複数の商品カテゴリーに対して複数のブランドをTV-CMしており、ブランド単位での集計を行うことで銘柄のレベルをさらに一段階深掘りした分析をすることが可能となるし、たとえばカテゴリーごとの集計を行えば、そのカテゴリーでのブランドの強弱、そしてそれが銘柄ごとの強弱として捉えることも可能となる。ブランドランキングが銘柄評価において重要な指標になると申し上げた主旨がここにある。
このように「CM白書」を使えば、たとえばキリンHDのマーケティング戦略で注力するカテゴリーがいくつありそれはどこなのか、それらのカテゴリーに投入されたブランドは何か、それらカテゴリーごと、ブランドごとで見た場合、キリンHDは競合に対してどの程度の優位性があるのか、そもそも競合銘柄はどこであるのか、時系列で見た場合その関係性はどのように変化しているのか、といった銘柄分析に欠かせない視点をいくつも得ることができるのである。「CM白書」がアナリスト垂涎のツールであることがご理解いただけるであろうか。
このシリーズの二回目以降でご紹介した「CM銘柄ランキング」では、上場銘柄ごとのカテゴリー・ブランド・ポートフォリオ、つまりそれぞれの銘柄が幾つの商品カテゴリーにフォーカスし、それらのカテゴリーに対して幾つの商品ブランドを展開しているのかといった基礎データを得ることができた。今回ご紹介する「CMブランドランキング」では集計軸を銘柄からブランドに移すことによって個別銘柄がカテゴリーとブランドにそれぞれどのくらいのシェアのTV-CMを展開しているのか、といった銘柄ごとの販管費資源配分に関わる深掘りデータを得ることが可能になる。
それによって何が見えてくるのか、次回はこの「TV-CM白書」の魅力の核心でもある「ブランドランキング」を実際に深掘りしながらTVデータを活用することによって得られる新たな銘柄評価手法についてみていこう。
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「2023-2024 TV-CM白書 – 東証上場銘柄編」
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【TV-CM白書】シリーズ
第1回 「TV-CM白書、登場!!」〜CMデータから注目銘柄を分析!〜
第2回 「TV-CM白書、登場!!〜CM銘柄ランキング」
第3回 「TV-CM白書、登場!!〜CMデータで銘柄分析」
第4回 「上昇銘柄ランキング!」
第5回 「下降銘柄ランキング」〜要注意銘柄はここで見分ける!
第6回 「ブランドランキング」〜優良銘柄はこれでわかる!
第7回 「ブランドランキング」からわかる優良銘柄とは?
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著者:梅田仁 | Jin Umeda
ライフログ総合研究所(Life Log Lab.)所長
iPhone、iPod、iTunes、Mac、Apple TV、Apple Storeのシニア・マーケティング・プロデューサーとして、Apple(AAPL)を時価総額世界一のブランドに育て上げることに貢献。iTunesで取り扱う内外のエンターテインメント・コンテンツ、アーチストの需要トレンド、視聴者の嗜好パターン分析を通してプラットフォームメディアビジネスにも精通。2013年、ライフログ総合研究所を設立、TV Rank、Talent Rankサービスを展開中。著書:「売れない時代に売る新常識」出版文化社、2011