【テレビ指数】増収率90%以上!CM指数で決算前に増収増益銘柄を把握!
決算発表よりも前に企業業績を知ることは可能だろうか?
インサイダーでもない限り不可能と思われるそんなことが、実はオルタナティブデータを活用すれば不可能とは言えなくなる。決算が正式に発表されるよりもはるか数ヶ月前に、財務指標とは直接関係のないオルタナティブデータから、その企業が増収・増益ルートに乗っているのか、そうではないのかを判断することができるのだ。
期末の決算発表よりも遥か前の期中の企業の活動状況を見ることで、その活動の結果である決算でどのような成績を収めるのかが判断できるのである。企業業績は今まさに進行中の企業活動の帰結であり、であれば進行中の企業の活動を観察することでその活動の結果である決算内容を予測する、そんなことが可能なのである。
企業のさまざまな活動の中で、ある程度のリソースを割いて大規模に行われているものの一つにTV-CMがある。多くの労力と費用をかけて行われているTV-CMの効果は、どのように検証されているかご存知だろうか?
TV-CMは多額の費用をかけて行う企業活動の一つでだ。ネット広告が隆盛であるとはいえ、TV-CMも販管費の多くの割合をかけて実施されている活動である。それだけの費用の妥当性を、経営陣はどのような判断で決裁し、その活動の結果を検証しているのだろうか?
他の企業活動同様、TV-CMもまた企業業績へのポジティブなリターンが予定されなければその投資は実行されることはない。つまり、どの企業でも当たり前に行われているTV-CMの評価と検証のメトリクスを応用すれば、期中のCM活動を観測するだけでその帰結としての業績予測を行うことは可能なのだ。
TV-CMを実施したことで得られる望ましいリターンは、株主や経営者の目線で考えればそれは一義的・短期的には企業としての売上の増加であり、獲得する利益の増加であり、それらの経済的な成果を通して得られる長期的な企業価値の向上とその結果としてのステークホルダーへの貢献・還元でなくてはならない。分かりやすく言えば、そのTV-CMが企業の業績にとってどのような好影響を与えることができるのかが、TV-CMの起案者が説明すべき評価の基本であるべきだ。
イメージや認知の向上、あるいは検索やSNSのトラフィックの上昇、店頭来店やキャンペーン応募の増加といったTV-CMの効果でよく語られる個別の指標も、それらはあくまで直接計測することが容易な一次指標であり、それらの一次効果の結果得られるビジネスとしての成果は最終的には企業の決算として経済価値に還元されて初めて意味を持つ。好感度が上がろうと、検索量がいくら増えようと、その事業が赤字では困るのである。
筆者もIBM(NYSE: IBM)やApple(NASDAQ: AAPL)といった米国企業で長年TV-CMを担当してきたが、その成果は全て決算に還元できる数値として共有されてきた。
各企業は独自のマーケティング・リターンモデルを持っており、それに基づいてマーケティング投資の妥当性の検証と評価が行われる。株主への説明責任として経営レベルで経済効果がシェアされているのである。それらのモデルは高度な社外秘であり、トップティアの企業がそれを広告代理店やコンサルに開示することは決してない。
各企業のモデルをご紹介することはできないが、オルタナティブデータを使って同様の効果検証を行うことは可能だ。現在進行中のTV-CMの実施状況をモニタリングして、その結果としての企業業績を予測しパターン化すればいいのである。
TV-CMの実施状況は、エム・データが生成しているTV番組とTV-CM放送実績データ「TVメタデータ」を集計し指標化した「テレビ指数(CM指数)」を使ってを把握することができる。これにTV-CM実施前後の各銘柄の売り上げ、そして利益の推移を加え、TV-CMの実施パターンと主要財務指標の間にどのような関係があるのかを分析する。
今回は東証プライム、スタンダード、グロース上場の全3842銘柄の2022年1月から2024年9月までの2年9ヶ月間のTV-CM実施状況と、それら銘柄の決算・財務データについての分析を行なった。
全3842銘柄の2年9ヶ月間の活動のうち、期間中にTV-CMを行なったのは868銘柄。この全TV-CM実施銘柄を、規模や期間といったCM指数から得られる条件を使ってパターン類似性の高いA、B、Cの3つのクラスターにランク分けする。この分類方法と各ランクごとの実際の銘柄リストはエム・データが発行する「TV-CM四季報」に収録させていただいたので、ご興味があればぜひ手に取っていただければと思う。
このランクを分けには、TV-CMを実施した結果の決算状況が反映されている。増収傾向の多いパターン、増益傾向の高いパターン、そうではないパターン、これら決算結果の違いを反映されたTV-CMグループ分類となっている。
さらにCM指数の集計から得られる別の条件で、この3つのランクをそれぞれ+とーのグループにさらに分割する。この結果CM指数による銘柄の分類は、A+からC-までの3ランク6グループとなる。この6グループ分けの基準についても「TV-CM四季報」に記載させていただいた。
以上ここまでの分類に使ったデータはCM指数のみである。
CM指数というシングルソースのオルタナティブデータだけから868銘柄を6つのグループに分けるのである。このグループ分けは同じ分類条件を使うことで四半期ごと、月ごとなど、任意の期間ごとに再集計することが可能だ。必要に応じて直近の最新集計を手にすることができるのだ。
この分類方法とそれぞれのグループの銘柄リストは、エム・データが発行する「TV-CM四季報」に収録させていただいているのでぜひご覧いただきたい。
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さて、ではこのCM指数のみで分類したグループごとのTV-CM効果と、その結果としての決算の状況はどうなったのであろうか。
図1は、TV-CM効果が最大となるエリート銘柄のグループであるCM Rank「A+」銘柄のリストだ。
実際の銘柄名は「TV-CM四季報」をご覧いただければと思う。
集計期間は四半期、この図の場合は2024年のQ1(1〜3月期)のTV-CM実施実績に基づいた集計である。このA+にリストされた銘柄の91.0%が同四半期に増収、つまり売上増を達成、また70.0%の銘柄が純利益も増加していた。「A+」ランクの銘柄の91.0%が増収、70.0%が増益という結果になっていたのである。この増収・増益率は他の期間で見ても同様で、TV-CMの実施側からすればCM Rank「A+」の条件を満たした銘柄の増収期待値は90%以上、増益期待値も70%以上と言うことができる。
この結果を同じ四半期にTV-CMを実施しなかった銘柄全体と比較すると、「A+」ランク銘柄の増収銘柄数はTV-CMを実施しなかった銘柄全体と比べて21.3%のプラス、増益銘柄数でも11.6%のプラスという結果になった。この増収銘柄数21.3%増、増益銘柄数11.6%増がTV-CMを実施していない銘柄と比較した時の「A+」ランク銘柄の「TV-CMボーナス」ということが言えるのではないだろうか。
これは他のCM Rankのグループの結果を見ればさらに明らかになる。
たとえば、A+よりも抽出条件が緩やかなB+グループでは、増収(売上増)銘柄は77.2%に下がり、TV-CMを実施していない銘柄全体と比較したTV-CMボーナスは7.5%のプラスまで下がる。B+グループ銘柄の増益(純利益増)銘柄数は64.1%、CMを実施していない銘柄全体と比較したTV-CMボーナスは5.7%のプラス、とこちらもA+よりも増益銘柄数が減少する。
最も抽出条件の緩いC-グループでは、増収(売上増)銘柄は75.7%、TV-CMを実施していない銘柄全体と比較したTV-CMボーナスは5.9%のプラスとなった。
つまり、A+からC-までの6グループで見ると、CM指数が高くその抽出条件の厳しいグループほど増収効果、増益効果、つまりTV-CMボーナスが高くなるという傾向になったのである。
いかがだろう、直近のCM指数の集計だけで、その後の増収効果、増益効果がある程度予測できる、財務諸表や決算の発表よりも数ヶ月も前に、TV-CM実施全銘柄(今回の分析では868銘柄)の財務状況の見通しを推察することができるのである。
その確率は、あくまでも過去の実績から見た想定ではあるが、「A+」ランク銘柄で平均90%以上の増収、最も抽出条件の緩い「C-」ランクの銘柄でも75%以上の増収である。
もちろんこれらは過去の参考値でありこれから興る未来を全て保証するものではないが、オルタナティブデータを活用する可能性についてご興味をいただけるのではないだろうか。
詳細は当原稿内でご紹介した「TV-CM四季報」で解説させていただいているので、ぜひお問い合わせをいただければと思う。
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第2回 「TV-CM白書、登場!!〜CM銘柄ランキング」
第3回 「TV-CM白書、登場!!〜CMデータで銘柄分析」
第4回 「上昇銘柄ランキング!」
第5回 「下降銘柄ランキング」〜要注意銘柄はここで見分ける!
第6回 「ブランドランキング」〜優良銘柄はこれでわかる!
第7回 「ブランドランキング」からわかる優良銘柄とは?
第8回「ブランドランキング」でわかるカテゴリー別優良銘柄〜1. 競争型カテゴリー
第9回「ブランドランキング」でわかるカテゴリー別優良銘柄〜2. 支配型カテゴリー
第10回「ブランドランキング」でわかるカテゴリー別優良銘柄〜3. マイナーブランド型
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著者:梅田仁 | Jin Umeda
ライフログ総合研究所(Life Log Lab.)所長
iPhone、iPod、iTunes、Mac、Apple TV、Apple Storeのシニア・マーケティング・プロデューサーとして、Apple(AAPL)を時価総額世界一のブランドに育て上げることに貢献。iTunesで取り扱う内外のエンターテインメント・コンテンツ、アーチストの需要トレンド、視聴者の嗜好パターン分析を通してプラットフォームメディアビジネスにも精通。2013年、ライフログ総合研究所を設立、TV Rank、Talent Rankサービスを展開中。著書:「売れない時代に売る新常識」出版文化社、2011