【Talent Rank】2018上半期タレントランキング No.1女優、広瀬すずのマルチユース戦略

エム・データが提供するタレント全量データサービス「Talent Rank」を使って、2018年の上半期タレントランキングを見ていこう。

前回の記事(最強タレントを探せ!タレントポジショニングで見る旬なタレント、伸びるタレント)で、「Talent Rank」ではタレントの上位グループを「スーパースター」と呼ぶとご紹介した。スーパースターの定義は、テレビ露出量が全タレントの上位20%以内で、同時にTwitter話題数も上位20%以内であること。この条件を満たすのは、タレント全体の約4%しかいない。スーパースターは文字通り、現在のスーパータレントたちだ。

今回はこのスーパースターの2018年上半期ランキング、そう日本のタレント業界を代表するベストパフォーマーたちをご覧いただこう。尚、本稿では現在開発中の「Talent Rank」のサマリー編「タレント四季報」のメニューを用いている。

■2018年上半期のNo.1タレントは、羽生結弦

Talent Rankのスーパースターを上位からご覧いただこう。
 
 

 
 

スーパースターの定義は、テレビ露出力上位20%以内とTwitter話題力上位20%以内を同時に満たすことだ。テレビ露出上位20%は番組露出分数に換算すると週平均約200分になることは前回の記事でご紹介した。Twitter上位20%は、週平均約250アカウントになる。2018年1ー6月の全期間を通して毎週平均250人以上にツイートされてきたという条件だ。この条件を使い、Talent Rankから2018年の1-6月期全体を通してテレビ露出量週200分、Twitter週250アカウントを超えるタレントを抽出し、これをTwitterアカウント数の順に並べたのが図1の「スーパースターランキング 2018/1-6月」だ。

第一位は、羽生結弦。前回の記事(最強タレントを探せ!タレントポジショニングで見る旬なタレント、伸びるタレント)でご紹介したタレントパワーを可視化するタレントポジショニングのチャートで、一人だけ突出していたのが羽生であったが、それを数字で裏付けたのがまさにこのチャートになる。羽生は2018年2月の冬季オリンピックでの活躍でテレビ露出量とTwitterでの話題量が爆発し、特にTwitterは2位の松本潤(嵐)に3倍の差をつけ上半期全体を通してのナンバーワンの数値となった。まさに国民栄誉賞にふさわしい傑出したスコアでである。

羽生に続くランキングにも、今年上半期大活躍のタレントたちが並ぶ。アイドルのナンバーワンは松本潤(嵐)、お笑いのナンバーワンがサンドウィッチマン、タレントナンバーワンがマツコ・デラックスといったおなじみのビッグネームが上位を占めている。そして俳優・女優カテゴリーのナンバーワンに広瀬すずという順位だ。


■俳優女優No.1は、広瀬すず

このランキングを前回からの伸び(前期比)でご覧いただくと、個々のタレントの状況がさらにおわかりいただけるかと思う。

たとえば羽生の場合、Twitterの前期比が45,000件のプラスであった。前期2017年7-12月からTwitterが45,000件増えたということだ。羽生の1-6月のスコア60,000件(週平均)のうち45,000件(週平均)が今期新たに獲得したスコアであることがわかる。前期は60,000から45,000を引いた週平均15,000件だったわけで、これは今期のスコアでいうと櫻井翔やマツコのクラスに匹敵する。それでもタレントTop5を伺うすごいスコアであったわけで、もともとトップアイドル、トップタレント並みのバズパワーを持つ羽生が、オリンピックでの大活躍によるブーストで一気に重力から解き放たれた異次元の存在のような話題力を唯一一人だけ獲得したことがお分りいただけるであろうか。

他にTwitterの前期比でスコアが高いのはお笑いのナンバーワンのサンドウィッチマン、彼らはTV番組露出の前期比も週平均100分のプラスとなっており、上位陣では坂上忍に続く2位のテレビ露出力となっている。高水準のバズ量にテレビ露出の拡大も伴うまさに売れっ子のパターンと言えるだろう。

おなじく話題力と露出力の同時拡大を達成しテレビ露出力200分越えを果たしたのが大谷翔平、そしてひょっこりはんだ。彼らは上半期を代表するニュースーパースターと言えるだろう。

CMの前期比で伸びたのは、俳優・女優2位の竹内涼真。竹内はTwitter話題力が前期より大きく減っているのが気になるが、これはテレビ露出減と連動した動きだろう。俳優女優はなかなか連続してテレビに出演し続けられないので、これは致し方ないところ。とはいえ下半期以降は話題作への露出を果たして獲得した俳優No.1の地位を固めたいところだ。

竹内以上のスコアを獲得した俳優・女優カテゴリーのNo.1は広瀬すず。広瀬の各スコアの対前期増減値はそれほど大きくない。もともと高かったスコアを今季も維持した格好だ。この高いスコアを維持するパワーはどこから来るのだろう。それを探ることで、スーパースターを維持し続ける条件が、何か見えてくるかもしれない。2018年上半期俳優・女優No.1、広瀬すずの強さについて、もう少し掘り下げてみよう。

Talent Rankサマリー編「タレント四季報」から広瀬すずのトレンドを表示させたのが下図だ。Talent Rankではこのように任意のタレントのデータを取り出すことができる。
早速内容を見ていこう。
 

 
 

図の一番上、トレンドチャートには「タレント四季報」の4つの主要指標の週別の時系列変化がグラフ表示されている。指定した期間は2017年4月から2018年6月、表示されているデータは上から順にテレビ番組露出(折れ線はテレビ番組での話題回数)、二番目は広瀬すずのCM出演秒数(折れ線はCM出演社数)、CM出演社数はあくまで各週ごとの社数なのでタレント契約をしている広告主がすべて同時にその週にCMを放送しているわけではないので注意していただきたい、ここの数値はあくまでその週にCM放映があった社数となっている。三番目は広瀬すずをツイートしたTwitterアカウント数(折れ線はツイートのポジティブ率:青とネガティブ率:赤)、Twitterアカウント数にはタレント上位10%のラインを参考値として引いてある。スーパースターの場合、テレビ番組分数とTwitterアカウント数が上位20%以内が抽出基準となっているが、ここではさらに厳しい上位10%線を参考に引いてある。

広瀬すずのトレンドと、その下の出演番組リスト、CMリストを見てお気づきいただけるのは、広瀬のテレビ番組露出が2017年の10月と、2018年の1月に集中していることだろう。2017年10月はTBS、2018年1月はNTVでの露出集中だ。 2017年10月の露出は映画「先生! 、、、好きになってもいいですか?」の劇場公開がテーマで、この映画にはTBS、CBC、毎日放送、北海道放送、RKB、GYAOが製作委員会に加わっている。製作幹事はワーナーとTBSだ。

TBSは2017年3月公開の広瀬すず主演映画「チア☆ダン」の製作にも関わっている。映画「チア☆ダン」はまだテレビ放映されていないが、「チア☆ダン」のドラマバージョンが2018年7月からTBSの金曜ドラマ枠で放送開始、ドラマは映画の9年後を描く設定で広瀬も映画の役のままゲスト出演する。広瀬の出演番組リストの2018年6月にある「TBS夏の新ドラマ祭!」がこのドラマ「チア☆ダン」の告知だ。もしかするとドラマ「チア☆ダン」が最終回を迎える9月のタイミングで映画「チア☆ダン」の地上波初放送がTBS系列であるのかもしれない。

このタレントを軸にした映画 x テレビミックスの手法を綺麗に実践したのが2018年1-3月期のNTVだ。2018年1月は広瀬の三年振りになる連続ドラマ主演作「anone」の番宣を主体とした露出集中、「anone」が最終回を迎える3月はNTVが製作幹事を務めた広瀬主演映画「ちはやふる -上の句-」と「ちはやふる -下の句-」の地上波初放送、そして2018年3月公開の続編映画「ちはやふる -結び-」をテーマにした露出集中だ。

いかがだろう、各局とも時期をずらしながらタレントを軸としたコンテンツミックスを上手に行なっている。CXも2018年3月のタイミングに合わせて自社製作の広瀬の過去の映画出演作「四月は君の嘘」を地上波初放送、また6月には是枝裕和監督のカンヌ映画祭パルム・ドールにちなんで広瀬も出演した「海街diary」が再放送された。

映画やドラマ、コンテンツ単体の収支ではなく、広瀬すず全体の収支。広瀬すずそのものがあたかも一つの巨大なコンテンツで、出演するテレビCMも含めて多くの人々が「コンテンツ広瀬すず」の制作と運営に関わっているとさえ言える。

このマルチコンテンツ展開の軸になれるところが、今の広瀬の強みだ。広瀬を軸として、様々な番組、映画、ドラマがまるで大きなシリーズの一部のように連続して展開されていくのだ。それは複数のテレビ局さえも横断して彼らを巻き込み、エンターテイメント業界全体に恩恵をもたらしているようだ。たとえば、これだけのパワーのあるタレントであればCMをパッケージ化した新たな広告メニューの開発なども、容易に可能だろう。そんな、業界にイノベーションを起こせるような潜在的なエネルギーさえ感じさせるところが
広瀬の凄いところだとも言える。

今の日本のエンターテイメント業界において、”青春”を演じきることのできる女優は広瀬が筆頭なのかもしれない。だからこそこれだけのコンテンツの集中と、放送局と映画会社、広告主を横断したメディアミックス展開が緻密に組み立てられていくのだろう。現在公開中の映画は次のコンテンツ展開のためのブリッジとなり、またその先で新たな広瀬の作品が大きなメディアの仕掛けの中で話題作りをされていく。
2019年にはNHKの朝ドラ主演も決まっており、今後も広瀬すずの”マルチユース”は業界全体を巻き込んで拡大していくのだろう。


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