【TV Rank Fintech 考察】第4回「テレビ指数に株価が反応する条件とは?」

エム・データが提供する最新のクラウド型データサービス「TV Rank FINTECH」を使ってテレビと株価の関係をご紹介するシリーズの4回目は、テレビ指数と株価の関係をさらに強くする新たな指標の存在についてだ。


前回の記事【TV Rank Fintech 考察】第3回「TV-CMは株価を上げるか?」では、アサヒグループHDの株価の上昇期に見られたテレビ指数(TV番組とTV-CMを合わせたその銘柄の全テレビ露出量を指数化したもの)の急拡大の背景には、ベースラインのビール2ブランドに加えて複数の事業カテゴリーでの季節ブランドのTV-CMの短期集中的な投入があったことをご紹介した。


しかし、季節ブランドの投入は例年のことであり、それだけでこの時期に同銘柄の株価が上昇率で33.8%にもなるほどの急激な反応をするものだろうか、という疑問も提示させていただいた。


その疑問にお答えするのが、今回のテレビ指数と株価の関係を説明するもう一つの指標だ。


図1)TV Rank FINTECH | TV-CM指数 前年比/前月比 – 2023年4月




図1をご覧いただこう。


これはアサヒグループHDのTVトレンドの上昇期であった2023年4月期の東証上場全銘柄のTV-CM指数の前年比と前月比を表したグラフだ。それぞれの円は銘柄ごとのTV-CM指数の大きさを表し、グラフの縦軸はTV-CM指数の前年比、同じく横軸は前月比を表している。一見すれば、銘柄ごとのTV-CM指数の大小と、それが前年、前月と比べるとどのようなポジションにあるのかが簡単にわかるグラフだ。


たとえば、TV-CM指数(TV-CM露出量)が前月に対して増えていれば右側へ位置するので、シーズナリティによる増加であればその銘柄はグラフの右象限にプロットされることになる。さらにTV-CM指数が前年同月に対しても増加していれば、その銘柄はグラフの上に位置していく。


つまりこのグラフの右上象限にいる銘柄は、前月に対しても、前年に対してもTV-CM指数がプラス、単なるシーズナリティだけではなく昨年対比でもTV-CM指数が増加している銘柄ということになる。


TV-CM指数に代表されるようなマーケティング、販売促進、営業、新製品投入などの販管費に関して昨年対比で大きな投資をしている銘柄、昨年よりも強気な判断をしている銘柄、ということは、結果としてシーズナリティでの増減に加えて通年でも経営的に業績の拡大を見込んでいる銘柄である、ということがいえるのではないだろうか。これは株価に織り込む上で好材料ではないだろうか。


それとは反対にグラフの左下にいる銘柄は、弱気の投資判断か、この景気拡大期にコスト削減に注力しているのか、いずれにせよ短期的には効率改善は見込めても営業規模の面ではあまり期待のできない銘柄、ということがいえるのではないだろうか。


TV-CM指数はあくまで企業活動のごく一部の側面を取り出したに過ぎない。だが、こうやってその時系列での動きやポジションをみることで、その企業の意思や判断を検証することができる。それが業績に対する期待値を高めるものであれば、株価が反応するのも当然なのではないだろうか。特に長く続いたデフレから脱却し新たな景気の好循環を作ろうとする現在の経済環境にあっては、歓迎されるのはこのグラフの右上にあるような強気な投資判断をしている銘柄群なのではないだろうか。証券コード2502のアサヒグループHDが一際大きな赤い円を伴ってこの右上象限に位置していることと、この時期に同銘柄の株価が上昇率で33.8%にもなるほどの高騰を示していることは無関係ではないのではないだろうか。

前回ご紹介した週ごとの時系列でのTVトレンドの上昇期に、今回ご紹介するTV-CMの昨年対比での増減という指標を加えることで、テレビ指数と株価の関係がさらに興味深く説明されるというのが今回の原稿の趣旨だ。


実際のデータの面から見ても、この右上象限、とくに昨年対比でTV-CM指数がプラスとなっている銘柄の株価勝率はそうではない銘柄と比べて高くなる傾向があることが検証されている。

たとえば、2023年5月期から11月期の7ヶ月間の例で見ると、東証上場全銘柄のうちこの時期にテレビに一度も露出しなかった、延べ「19,027銘柄」の週ごとの株価上昇勝率(その銘柄の前週の終値をその週か翌週の終値が上回った率)を、テレビ露出があった、延べ「7,447銘柄」のTVトレンド上昇期の勝率と、昨年対比でTV-CM指数がプラスとなっていた、延べ「1,075銘柄」の勝率が上回っていた。


また、昨年対比でTV-CM指数がプラスであった、延べ「1,075銘柄」の1銘柄あたりの株価上昇勝数は、テレビ露出がなかった、延べ「19,027銘柄」の勝数の1.5倍であった。東証上場全銘柄の検証で、TVトレンドが上昇期を迎えTV-CM指数が昨年対比でプラスである銘柄は週ごとの株価上昇勝率でテレビに露出していなかった銘柄を上回り、勝数で約1.5倍という結果が得られたのである。


この傾向はTV番組指数でも同様で、TV番組指数が前年対比でプラスである銘柄の株価上昇勝率はテレビに露出していなかった銘柄を上回ることが確認されている。


2022年1月から2023年12月までの集計をまとめると、テレビ指数に株価が反応しやすい条件とは


・テレビ指数が上昇期(TVトレンドの上昇期)である場合
・TV-CM指数が前年に対してプラスである場合
・TV番組指数が前年に対してプラスである場合



ということになる。

図2)株価上昇シグナル




TV-CM指数の元となるTV-CM露出は各企業の販管費である宣伝広告費からの支出に基づいているので、各企業の予算編成・執行上の経営判断を図る上で有効な指標であると言える。同様にTV番組指数の元となるTV番組露出は各企業の意思というよりも報道機関でもある各TV局の編成意図によって露出量が決められてくるので、純粋にその情報の持っている価値によってその量が増減していく傾向がある。言い換えると、企業の内的意図に基づいたTV-CM指数と、企業の外的評価の結果であるTV番組指数という二つの異なる指標を組み合わせることで、各銘柄の多角的な評価が可能となっている面もあるかと思う。


このように上場銘柄毎に整理されたTV-CM指数とTV番組指数は、各銘柄の予算にみられる経営判断を反映したTV-CM指数と、純粋にその銘柄の持つ情報価値を反映した番組指数という異なる性格の指標を組み合わせた定量スコアとして、面白い活用方法があるのではないだろうか。
次回はすこし毛色を変えて、TV-CMのクリエイティブやTV-CMタレントと株価についてのお話をさせていただく。






つづく




シリーズ連載「TV Rank FINTECH 考察」

  第1回 「テレビデータで株価を見る」
  第2回 「テレビ指数が上昇すると株価も上がる?」
  第3回  「TV-CMは株価を上げるか?」
  第4回 「テレビ指数に株価が反応する条件とは?」
  第5回 「タレントは株価を上げるか?」
  第6回 「CMクリエイティブで株価を上げる方法」


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