【TV Rank Trend-Spot -02】「大阪万博」の効果をテレビで可視化する

「大阪万博」が閉会して約1ヶ月、連日テレビを賑わせていた万博の話題もこのところすっかり下火になってきた。気がつけば今年もあと12月を残すのみ、そこで今回はこの一年間を振り返りながら、TVメタデータから見る「大阪万博」の効果について検証してみよう。




図1)2024年と2025年の「都道府県別スポット・ランキング」






図1は2024年と2025年の「都道府県別スポット・ランキング」である。日本全国の都道府県の話題がテレビでどのぐらい、どのように紹介されたのかをまとめたものだ。都道府県別に、店舗や施設、観光地、宿泊施設などのスポットの話題が、テレビでどの程度紹介されていたかが集計されている。市区町村別でもご覧いただけるので、たとえば地方自治体や観光業、不動産、地方の企業の関係者の方などが、地元の情報が関東や関西、中京などの都市圏のテレビでどのぐらい、どのように紹介されているのかをご覧いただくのに適したサービスとなっている。


これを用いれば、たとえば「大阪万博」の話題性の規模や波及効果なども検証できる。

各エリアでどの施設がどのぐらい紹介されたのか、他のエリアと比べると規模や影響はどう違うのか、伸びている自治体はどこか、取り上げられている施設はどこかなどが集計され、可視化されているので、たとえば、都市圏からの集客や人流の確保、観光客や滞在者が訪れているであろうスポット、注目を集めているエリア、就職や移住の可能性、営業や商談、投資などのビジネスのチャンスなどを検討する際に、地元のスポット情報がどのように取り上げられ、それらを県内での順位や他の自治体との比較で見た時にどう見えるのか、データ全般から言える興味関心のトレンドや評価の傾向、といったことが検証材料として浮かび上がり評価に活用することができる。


図1の都道府県ランキングを見ていただくと、2024年は8位であった「大阪府」が、2025年には5位に大きく躍進したことがわかる。これは関東エリアでのテレビ放送の集計なので上位を東京と隣接の一都三県が占めているのは当然と言えるが、大阪はそれに次ぐ位置にまで上昇したことになる。

ちなみに静岡、北海道といった関東以外の自治体が大阪に次いで茨城、栃木、群馬より上位にいるのは面白いところだ。一都三県に次いで、関東のテレビ空間の話題は大阪、静岡、北海道が占めているのである。これについてはまた項をあらためて解説してみよう。




図2)2024年と2025年の「大阪府スポット・ランキング」






さて、「都道府県別スポット・ランキング」で5位に大躍進した大阪府だが、2025年に大阪府で最もテレビに取り上げられたスポットは「2025年日本国際博覧会会場」であった(図2)。2025年11月までの集計で「万博会場」が関東のテレビで取り上げられたのは放送回数で見ると1,150回、これは全国の施設別ランキングで見ても2位に大差をつける圧倒的な1位であった。

さらにこの「万博会場」の1,150回という数値は、都道府県別ランキングと比較しても13位の山梨県全体の1,126回を上回る規模になる。大阪に山梨が加わるぐらいのインパクトで大阪府はスポットランキングの5位に急上昇し、関東エリアのテレビで一都三県に次ぐ規模の話題となったと言えるが、大阪の話題上昇は万博だけではなかった。

2024年の大阪府のスポット・ランキングの合計回数が1,755回であったのに対して、2025年は3,248回(いずれも11月までの集計)、「万博会場」の1,150回を除いても2025年は万博会場以外で2,098回ものスポット紹介の放送があったので、それだけでも2025年は2024年の約20%の放映回数増となっている。

まとめると、2025年の大阪府の「スポット・ランキング」は2024年比63%増の3,248回で全都道府県中第5位、大阪府内で第1位の施設であった「万博会場」を除いてもその他の施設合計でも20%増と、万博が牽引役となりながら大阪府全体も上昇したことがわかる結果となった。


図2は2024年と2025年の「大阪府スポット・ランキング」だが、たとえば代表的な大阪の観光スポットである「通天閣」は2024年の32%増で5位、「大阪城天守閣」も33%増の6位、「あべのハルカス」が22.7%増の10位、海遊館も5.6%増の16位と、既存スポットにも万博の効果が波及する結果となった。


既存スポット以外で特徴的なのは、市内の大型ホールが大きく伸びたことだ。たとえば「新歌舞伎座」が12位だった2024年の3.6倍の放送回数で3位に、「COOL JAPAN PARK OSAKA」が2024年の16位から2.1倍の回数で8位に、「NHK大阪ホール」も2024年の122位から27倍の大幅増で11位に、「門真スポーツセンター」も8倍の14位にと、大幅に上昇した。

これらの会場は万博関連のイベントや、万博を機に来日した海外のアーチストの公演などを開くことで、万博のサテライト会場のように機能し、夢洲の万博会場から大阪市内へと回遊する人流を作り出すことに貢献した。


全国の施設別ランキングで圧倒的な1位となった「万博会場」が首都圏や全国から大規模な集客を可能にした太いピラー(柱)であったとすれば、これらの市内の既存大型ホールは集めた来場者を市内に環流させるハブとして機能していたことになる。

エリア外から人を引き寄せる集客装置としてのメインピラーは重要な存在だが、一旦獲得した滞在者を他の施設や店舗へと市内に満遍なく誘導する仕掛けとしてこれらのサテライトは万博というイベントにおいて重要な役割を果たしていた。


実際に2025年は大阪府では719件ものスポットがテレビで新たに紹介されていた。この新規放送スポット件数719件という規模は、732件の石川県、727件の長崎県に並ぶ規模で、大阪府の719件の場合その多くはショップや飲食店、つまり万博効果で石川県全体並の店舗がテレビで新たに紹介されていたということになる。このあたりの経済効果を想像いただければ、万博が大阪の街の活性化にどれだけの貢献をしたのかが想像いただけるだろう。


「万博会場」のようなピラーがメインエンジンだとしたら、そのテーマを共有したサテライト会場であった各ホールがサブエンジン、そしてこれらイベントホールから市内各所の店舗や飲食店に人流が満遍なく供給され、このようにして多くの人々が万博をきっかけに大阪市内に散らばりディープな大阪を満喫し体験することができた。


万博という巨大イベントの集客力を、その会場だけに留めるのではなく、市内に満遍なく送り込み最後は街場の商店にまで恩恵が行き渡るようにする、そうなって初めて万博がみんなのものになったわけだ。

いかがだろう、テレビのスポットデータから「大阪万博」の効果についてお分かりいただけただろうか。このスポットデータを見ていただくことで、各都道府県、各自治体の傾向を掴むことができる。最近元気な自治体、参考にしたいエリア、調べたい観光地、様々な地域の課題を検証するデータとしてご活用いただくことができるのではないだろうか。

このスポットデータはクラウド型のデータサービスでご利用いただけるので、ご興味のある方は是非お問い合わせいただければと思う。自治体や観光ビジネス、エリアビジネス、不動産や再開発など、さまざまなニーズにお応えすることができるかと思う。


さて、今回は万博と大阪について見てきたが、最後にコメントしきれなかった点に次いて触れておこう。

一つはUSJだ。

図2をご覧いただければわかるように、万博がなかった2024年までの大阪の施設の柱(スポット・ランキング1位)は「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」であった。

万博効果で既存スポットもテレビ放送回数増となったと申し上げたが、じつはこの1位のUSJだけは17%の放送減となってしまった。その最大の理由は万博との競合だと考えられる。

スポットデータではどのように紹介されたかといった番組内容も見ることができるが、滞在型のUSJは万博と回遊させるには時間的に余裕がなく、そのためテレビも万博との併用体験施設としての紹介がしにくかった、という事情があるのではないだろうか。


そしてもう一つのポイントは2026年、そう「万博後」である。

このような大規模なイベントは国家プロジェクトに近いものであり、そう何度も行えるものではない。まして、どの都道府県でも実行できるものでもなく、気軽に地域活性化の選択肢として俎上に載せられるようなものでもない。つまり、汎用的な事例としては評価しづらいわけである。

大阪の場合は、東京への流出はあるが近隣関西圏をはじめとして流入も多く、人口動態としては転入超過の状態にある。そのため、万博のようなイベントがなくても人口増がある程度期待できる地域的な価値を持つ。

だが大多数の自治体や地方経済にとっては人口減と高齢化、それに起因する県外への転出超が大きな課題であるはずだ。その意味で、大阪における万博の意義と、多くの自治体が期待するであろう流入人口の獲得や定住、移住促進についての直接的な答えには若干ギャップがあるかもしれない。

それについては、次回以降で見てみよう。


今回の記事で紹介した内容は、「TV Rank TREND-SPOT」にて確認できます。

「TV Rank TREND-SPOT」とは、TV番組で紹介されたスポット(飲食店・宿泊施設・観光施設・ランドマーク 等)の紹介状況をTableau上で可視化できるデスクトップツールサービスで、スポット(各施設)のTV紹介状況が確認でき、都道府県・市区町村別のスポット紹介件数の確認や隣接またはベンチマークしている他エリアとの比較、経年変化やトレンドウォッチなど、以下のような業務にてご活用いただけます。


●「自治体(都道府県・市区町村)での観光政策やPR施策等のプロモーション」
●「エリアマーケティグや商圏分析」
●「地域創生・活性に向けたコンサルティング・プロモーション」
●「観光地に向けた鉄道・バス・飛行機等の交通マーケティング活用」
●「不動産価値シミュレーション、賃料変動予測、REIT(不動産投資)」
●「生成AIによるデジタルヒューマン(アバター)、多言語翻訳などのインフォメーション・観光支援」


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