【テレビ銘柄白書 2024-2025-3】「”テレビ指数”で騰落銘柄を事前にチェック!」
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「テレビ銘柄白書」について、これまで二回にわたってご紹介してきた。
「テレビ銘柄白書」はテレビの放送記録である「テレビメタデータ」を元に、東証全上場銘柄のテレビ露出量とその推移から銘柄ごとの投資対象としての適性やリスク、将来のパフォーマンスの評価を行うことを目的に作成されている。従来型の伝統的な金融マーケットデータとは異なり、いわゆるオルタナティブデータとしてTVメタデータを活用することで、これまでの市場分析、財務分析から得られる伝統的なデータとは異なる評価軸を提供することを目的としている。
今回は、「テレビ銘柄白書」が具体的にどのようにして銘柄の評価を行うのかについてご説明していこう。
「テレビ銘柄白書」では、銘柄ごとのテレビでの露出量とその変化が、金融市場とどのような関係にあるのかに注目している。銘柄ごとのテレビでの露出量はその銘柄の取材価値に基づいた情報の量であり、その変化は銘柄ごとの情報価値の変化と捉えることができる。
情報価値の変化は個々の企業の活動量や話題性に起因した興味関心度の変化であり、テレビでの銘柄ごとの情報量が変化するということは、結果としてその銘柄の金融市場での評価にも何らかの影響を与えている可能性がある。
この銘柄ごとのテレビでの情報量とその変化を適宜提供することができれば、従来型の金融マーケットデータに加えて、テレビという新たなオルタナティブデータによる評価軸を利用していただくことが可能になるのではないか、それがこの「テレビ銘柄白書」の目的だ。
早速実際のデータを見ていこう。

図1は、銘柄ごとのテレビでの露出量と株価騰落率の関係を表したグラフである。
横軸の「テレビ指数」とは、銘柄ごとのテレビ露出量を指数化したもので、2024年の全テレビ露出銘柄の平均値が1となるように算出されている。たとえば、ある銘柄のテレビ指数が2であるとすると、その銘柄は全てのテレビ露出銘柄の露出平均値=1の2倍のテレビ露出量があったということになる。テレビ指数の数値が、そのまま全てのテレビ露出銘柄の平均値の倍数になっているので、これにより銘柄ごとのテレビ露出量の大小が直感的にわかりやすく、また時系列や他銘柄との比較の際も指数の数値を見るだけで容易に理解できるようになっている。
テレビ指数と株価騰落率の関係を表したこの図3-1をご覧いただくと、両者の数値が正の相関の関係にあることがお分かりいただけるだろうか。基本的にテレビ指数が上昇すれば、株価の騰落率も上昇していく関係になっているのである。
これはどういうことだろう。
テレビ指数が大きいということは、その銘柄のテレビでの露出量が大きい、情報量が多い銘柄であるということになる。基本的に時価総額が多い銘柄ほど、テレビでの露出量が多くなる傾向にある。時価総額が多いということは、一般に企業の規模が大きい、関与するビジネス領域や派生する企業の活動量が大きいということが言える。その結果として生じる情報の総量が多くなり、テレビに取り上げられる情報量も大きくなる。その中には株式市場的にも投資選好度の高い情報が多く含まれているだろう。
テレビで取り上げられる情報量とは、企業の活動の結果生じた情報量であり、活動の規模が大きくなれば情報量も増え、情報量が多くなればその中には投資意向を刺激するニュースやテーマも多く含まれていくことになる。このようにテレビ指数の累積が投資機会の増大へとつながり、その結果として株価の騰落率も累積していくのである。
もちろん、活動の規模が小さく情報量が少なくても、株式市場的には重要な情報もあるだろう。つまり、情報の内容そのものにも株式市場選好度を変化させるパラメーターがあるはずだという考え方である。量ではなく質だという観点だ。だがこれは情報量による騰落率への影響を否定しない。なぜなら、現実には情報の「量」と「質」という二つの変数が「株式市場選好度」に関連しており、この二つの変数は相反するものではなく精度を高め合う関係にあるからだ。この情報の「質」に対する議論は、あらためて項を設けて行なってみたい。
では、情報量の変化をどのように観察すれば銘柄の評価が行えるのだろうか?
わかりやすい例が以下の図2「TV Rank FT|テレビ番組指数・GX銘柄一覧」である。

GXとはテレビ指数のゴールデンクロス(GX)、つまりテレビ指数の短期トレンド(4週平均)が中期トレンド(9週平均)を上回った銘柄のリストである。他の分析で、テレビ指数のGX後2週間以内に約8割の銘柄の株価が上昇することがわかっている(2016年10月30日週〜2021年6月27日週でのTOPIX Core30銘柄によるバックテスト)。
つまり、テレビ指数が大きくトレンド変化の頻度(GX発生回数)も大きい銘柄ほど、GX発生による8割の上昇チャンスを累積していくことが可能になるのである。この情報量の上昇局面にだけフォーカスを当てたファンドを仮に組成した場合、従来型のファンドに対して3.2倍のパフォーマンス向上が得られるケースも出てきている(TOPIX 2023年との累積リターン比較)。
いかがだろう。
「テレビ指数」を銘柄評価に活用する可能性について、ご興味をいただけただろうか。
図2でご紹介した「TV Rank FT」は、「テレビ銘柄白書」の各分析軸を用いて実際に抽出をした最新の銘柄データをご提供するクラウドベースのオンラインサービスである。
次回以降も、オルタナティブデータとしてのテレビデータの金融業での活用例と、「TV Rank FT」で提供される魅力的な銘柄リストについてご紹介していく。
※本稿は、東京大学大学院工学系研究科 システム創成学専攻 和泉研究室・金融レジリエンス情報学における(株)エム・データ ライフログ総合研究所 所長 梅田仁「金融オルタナティブデータとしてのテレビデータ」2025年5月22日講義内容の一部抜粋です。
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著者:梅田仁 | Jin Umeda
ライフログ総合研究所(Life Log Lab.)所長
iPhone、iPod、iTunes、Mac、Apple TV、Apple Storeのシニア・マーケティング・プロデューサーとして、Apple(AAPL)を時価総額世界一のブランドに育て上げることに貢献。iTunesで取り扱う内外のエンターテインメント・コンテンツ、アーチストの需要トレンド、視聴者の嗜好パターン分析を通してプラットフォームメディアビジネスにも精通。2013年、ライフログ総合研究所を設立、TV Rank、Talent Rankサービスを展開中。著書:「売れない時代に売る新常識」出版文化社、2011