【テレビ銘柄白書 2024-2025-4】「”テレビ指数”で他者よりも早くトレンド変化の予兆を掴む!」
テレビ番組とTV-CMの放送内容を記録した「TVメタデータ」を元に、東証上場全銘柄のテレビ露出量とその推移から、業種ごと、銘柄ごとの投資対象としての適性やリスク、将来のパフォーマンスの評価を行うことを目的に作成された「テレビ銘柄白書 | TV Rank FinTech」。
今回はこの「テレビ銘柄白書 | TV Rank FinTech」を使って他者よりも早くトレンドの変化を掴む方法をご紹介する。
他者に情報で先駆けるには、一般に、
1)情報源がユニークである
2)情報の分析能力が優れている
といった優位性の獲得が必要になる。
金融業で言えば、1)についてはいわゆるオルタナティブ・データ、つまり従来型の市場・財務データではなく、他者があまり用いていない情報ソースからの代替データの活用が有効となるだろう。2)はすでに最先端工学の分野や大規模解析モデル、超高速処理の活用、AIによる高精度予測など、極限まで洗練された感がありここでの優位性の確保はなかなか難しいものがあるかもしれない。
「テレビ銘柄白書 | TV Rank FinTech」は金融業界にとってのオルタナティブ・データである「テレビデータ」がベースとなっており、1)の条件を見たしている。金融業界での「テレビデータ」の利用はまだ緒についたばかりであり、これに従来のテクニカル分析を組み合わせることで、情報源の優位性を確保したまま他者に先駆けたトレンドの変化の検出が可能になるかもしれない。

図1はこれまでの原稿でご説明してきた「テレビ指数」、ここでは「東証8001・伊藤忠商事」のテレビ番組指数のトレンドをもとに、その変化の予兆を検出する具体的な例についてご紹介している。
この図1のグラフの一番上は、「伊藤忠商事」の週あたりのテレビ番組指数、つまり週あたり同社がどのぐらいテレビ番組で取り上げられたかの、テレビ番組露出量のトレンドである。上場銘柄毎の「テレビ指数」は決算対象となる子会社、関連会社を合算した集計となっているので、「東証8001・伊藤忠商事」の場合はファミリーマートや、他のグループ企業のテレビ番組露出も合算された数値となっている。また「テレビ指数」はテレビ露出した全上場銘柄の露出量平均値が=1となるよう指数化されているので、たとえばグラフの最終週の3.68という数値は、この週の伊藤忠商事のテレビ番組露出量が全露出銘柄平均の3.68倍であるということがわかる。これにより、銘柄ごとの比較や、時系列での比較が直感的に理解しやすいようになっている。
グラフの上から2番目は週ごとのテレビ番組露出量の移動平均値である。
オレンジの折れ線が短期(4週加重平均)、緑が中期(8週平均)となっており、オレンジの短期線が緑の中期線を上抜ける所がいわゆるトレンドのゴールデンクロス(GX)である。
別項でもご紹介したが、このGX発生後2週間以内に株価が上昇する割合がTOPIX Core30のバックテストで勝率78.8%になることが確認されているが、たとえば今回の「他者よりも早くトレンド変化の予兆を掴む!」という欲張りな(笑)テーマであれば、GXの発生よりもさらに前にトレンドの変化を検知することはできないのか?という欲求にも繋がってくることになるだろう。
グラフの上から3番目は各週のテレビ指数が中期トレンド線である8週移動平均からどのくらい乖離しているかの移動平均乖離率である。過去の変化を平均化した移動平均は、たとえば8週移動平均であれば過去8週間に起こったイベントの変化を平均化した数値である。伊藤忠商事という銘柄から発生するニュース性、情報性が、これまでのニュースになりうるイベントの発生率と大差なく推移した場合今週はこのぐらいのテレビ露出量となるであろうという数値が、その週の「a : 伊藤忠商事テレビ指数8週移動平均値」となる。企業に大幅な構造変化やビジネス環境の変更がなければ、8週間のスパンで見た場合テレビ指数は「a」に収束していくので、たとえばその週の実際の「b : 伊藤忠商事のテレビ指数」が「a」を上回っていれば(乖離率がプラスであれば)、これまでの情報発生トレンドから見て伊藤忠商事のテレビ指数は8週移動平均値に近づいていく、つまりテレビ指数の数値が下降していく傾向が強くなる、ということが言える。反対に「b : 伊藤忠商事のテレビ指数」が「a」を下回っていれば(乖離率がマイナスであれば)、伊藤忠商事のテレビ指数は上昇していく傾向が強くなる、ということが言える。
この乖離率を使えば、先のGX発生よりも前にトレンドの変化を掴むことが可能となる。
たとえば、これはテレビ番組指数の9週平均乖離率を使った例ではあるが、同乖離率が+200%を超えた場合、テレビ番組指数のトレンド反転(下落)確率は77.8%、反対に-100%でトレンド反転(上昇)率は68.4%であったことが過去のテストで確認されている。この乖離率の数値が異なればトレンド反転率も変わるので、今回のテーマである「他者よりも早くトレンド変化の予兆を掴む!」意図の参考値としてこの乖離率を活用いただくことができる。
繰り返すが、テレビ指数のトレンド乖離率がプラスに大きくなればトレンドが下落する確率が高くなり、乖離率がマイナスになればトレンドが上昇に反転する可能性が高くなるのである。これにより、今回のテーマである他者よりも早くトレンド変化の予兆を掴むことが可能となる。これは、テレビデータを活用いただくメリットだ。
もちろん、全ては仮説である。これをもって具体的な利益を保証するものではないし、これらはあくまで過去の情報量の変化から見た傾向であり、実際の金融取引にはこれ以外に様々なメタファーが関与していくことになる。「テレビ指数」はあくまでも銘柄ごとのテレビ情報量の傾向とその変化から予兆を示唆するヒントであり、オルタナティブデータという伝統的なデータとは別のソースからのユニークな示唆情報としてご利用いただくことが、有益な視点としての活用例になるのではないかと考える。
今回ご紹介した「テレビ番組指数のトレンド乖離率」は、「テレビ銘柄白書」の各分析軸を用いて実際に最新の銘柄データ抽出したクラウドベースのオンラインサービス「TV Rank FinTech」でご利用いただくことができる。
次回以降も、オルタナティブデータとしてのテレビデータの活用例と、「TV Rank FinTech」で提供される魅力的なデータについてご紹介していく。
※本稿は、東京大学大学院工学系研究科 システム創成学専攻 和泉研究室・金融レジリエンス情報学における(株)エム・データ ライフログ総合研究所 所長 梅田仁「金融オルタナティブデータとしてのテレビデータ」2025年5月22日講義内容の一部抜粋です。
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著者:梅田仁 | Jin Umeda
ライフログ総合研究所(Life Log Lab.)所長
iPhone、iPod、iTunes、Mac、Apple TV、Apple Storeのシニア・マーケティング・プロデューサーとして、Apple(AAPL)を時価総額世界一のブランドに育て上げることに貢献。iTunesで取り扱う内外のエンターテインメント・コンテンツ、アーチストの需要トレンド、視聴者の嗜好パターン分析を通してプラットフォームメディアビジネスにも精通。2013年、ライフログ総合研究所を設立、TV Rank、Talent Rankサービスを展開中。著書:「売れない時代に売る新常識」出版文化社、2011