【テレビ銘柄白書 2024-2025-5】「”テレビ指数”で業種・業界分析!」
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テレビの放送記録である「TVメタデータ」を使って、東証上場銘柄の分析や評価を行うことを可能にした「TV Rank FinTech | テレビ銘柄白書」。今回は業種・業界別のトレンドを確認し、個別銘柄の状況を把握する方法をご紹介する。

図1をご覧いただこう。
これは、2022年5月から2025年5月までの東証33業種別のテレビ番組指数の推移だ。テレビ番組指数とは東証全上場銘柄のテレビ番組露出量を指数化したもので、テレビ番組で紹介された銘柄ごとの露出量がどのぐらいであるのかがわかるようになっている。指数=1は2024年の全テレビ番組露出銘柄の平均値であり、ある銘柄の指数が1を越えていれば、その銘柄は全番組露出銘柄の平均露出量を上回っているということになる。
業種別に集計されたテレビ番組指数は、その業種に分類される全ての銘柄の指数の累計値であり、どの業種の銘柄がどのぐらいテレビ番組に取り上げられたのかがわかる。テレビで紹介されることの多かった業種、少なかった業種がどこであるのかがわかるのだ。
テレビ番組露出が増加した業種、減少した業種、変動の多かった業種、少なかった業種はどこなのか。それは業種毎の話題性の推移であり、テレビ露出トレンドが上昇した業種、下降した業種の要因を探ることができれば、業種別の評価や機会の把握、課題の抽出などにつなげることもできるだろう。
具体的に見てみよう。
2022年5月から2025年5月までの期間で一貫してテレビ番組指数が高かったのは、グラフの一番上を占めるピンクのラインの業種だ。2023年5月ごろまではブルーのラインの業種と一番手を争っていたが、ブルーが脱落してからはピンクの一強、特に2024年以降はピンクは右肩上がりに指数を伸ばし二番手以降との差を広げている。
この業種別のテレビ指数を構成比(シェア)で見ると、2023年までは22%程度であったピンクの業種の構成比は、2024年以降は最大で30%を超える月も出てくるようになる。
30%超、つまり全業種の話題の1/3近くも占めることになるこのピンク線の業種、それは「小売業」である。「小売業」がこの期間、テレビで紹介されることがもっと多かった業種なのだ。

図2は、「小売業」のテレビ指数の銘柄別の内訳だ。図1のピンクの線が一強状態を見せていた2025年1-6月期の小売業のテレビ番組指数を、銘柄別の内訳にしたものである。
1位は、イオン(東証8267)、2位はセブン&アイHD(東証3382)。
1位のイオンの小売業界内の指数構成比(シェア)は12.1%、セブンは10.6%、9位の吉野家までの構成比を足し上げると49.9%になる。つまり1位のイオン以下の上位9銘柄で、小売業界全体の話題の半分を占めている、ということになる。上位銘柄の話題占有力が高い業界、それが小売業なのである。上位の何かと話題性の高い銘柄が、業界全体のトレンドを先導していく力を持っている業界と言えるのではないだろうか。
では、実際にどんな話題がテレビで取り上げられていたのだろう。

図3は、1位のイオンのテレビ番組の内容(ヘッドライン)を集計したものだ。小売業が最もテレビ番組指数を伸ばした2025年5月時点での、小売業界1位のイオンの話題の内訳一覧である。テレビで最も取り上げられた業界のナンバーワン銘柄は、どのような話題で紹介されていたのか。
この図を概観してわかるのは、その話題の中心が「米問題」であることだ。
「与野党に問うコメ価格・安定供給は」
「備蓄米29日引き渡し・コメ価格高騰」
「政府備蓄米・随意契約・19社が申請」
「コメ高騰・「コメ農家」と「店頭価格」
「新たな備蓄米・引き渡し開始」
米、米、米である。
2024年以降小売業界の話題が大きく右肩上がりに伸びてきたのも、この「米問題」の過熱化が背景である。この時期、テレビが最も多く取り上げたテーマが「米問題」であったのだ。
たしかに米の価格と供給をめぐる話題は連日テレビを賑わせてきた。だが、それが全産業を代表するほどのテーマであると思われただろうか?
しかも、米問題が農業ではなく、流通業の話題として集計されている。
実はここが、上場銘柄別にテレビの放送内容を集計したテレビデータの面白いところである。
テレビは、視聴者に分かりやすい切り口、表現からその問題を取り上げる。
「事件は現場で起きている」というテレビドラマの名言があるが、この「米問題」の場合、その騒動の現場はスーパーの店頭であるのだ。テレビは連日、視聴者が日常米を買いに行くスーパーの店頭から、米の在庫がないこと、あっても価格が高いことを伝え続けた。
そう、「米問題」はテレビ視聴者にとっては、
●スーパーの店頭に米の在庫がないこと
●在庫があっても価格が驚くほど高いこと
に集約されていたのである。そう、米問題とは視聴者的には小売業の売り場の問題なのだ。
もちろん、米はスーパーの店頭で収穫されるわけではない、米の問題は多岐に渡り、農水省の方針や、生産調整や、JAの対応や、生産者の状況や、外食産業の動向や、物流問題、輸入米や海外での事情、この米問題を取り巻くファクターやプレイヤーは様々なのだが、テレビがこの問題をわかりやすく伝え、視聴者的な共感を得られるファクトは至ってシンプルで、
「店頭に米がない」
「あっても驚くほど高い」
「なんとかしろ!問題だ!」
という単純明快なものなのである。
なので視聴者にとってはこのコメ問題の解決も
「価格もリーズナブルである」
と、単純明快のものでなくてはならない。補助金とか受給見通しとか流通構造とか農家の後継者問題とか、そのようなことは絵になりにくいし消費者的な共感を得られにくい。そもそもここまでの情報量を支えるファクトとしては力不足なのである。
「スーパーの店頭に米がない!」
「えらいこっちゃ、政府なんとかしろ!」
事件は現場で起きているのである。
その意味で政府がとった備蓄米の放出は店頭価格を一時的に下げ供給量を増やすという、シンプルな課題認識に直接的に応える対策としては極めて良策であったが、品質問題や継続的な供給確保といった二次的な課題の面では抜本的な解決策にならないものであった。
とくに小売業界としての本質的な解決策は、聖域化されてきた米の生産流通問題を抜本的に改善するものでないと視聴者の期待に応えるものにはならないであろう。
国民的な関心がここまで高まり、その割には今も抜本的な解決先が見出せないこの問題は、今後社会的にも、政治的にもさらに大きな波紋を呼ぶものになりかねない。
当事者である小売業界にとってもそれは得策ではないはずだ。
喫緊の解決すべき重要課題なのである。
それには、政府や関係機関、他業界といった見通しのつけにくい環境の変化をただ待つのではなく、小売業界自らが自業界の課題として積極的に取り組む必要もあるのかもしれない。
たとえば、米の生産から店頭販売まで、流通業がオーナーとなって一貫したサプライチェーンを築いてしまう、ということも必要なのかもしれない。
不可侵とさえ言われてきた現行の米の生産、流通体制からみればそれこそ「破壊的イノベーション」となりかもしれないが、全産業を代表するだけの国民的な関心、話題性のあるテーマが自らの業界にあるのだ、という強い当事者意識である。それが今も根本的な解決に至ってはいない状況にある。
これはチャンスでもある筈だ。
小売業が自らの業界の問題として消費者の期待にストレートに答えてみせるチャンスであり、「日本人の主食」という一大メインマーケットにおけるゲームチェンジャーになりうるだけの数百年に一度の機会が、まさに今訪れているのかもしれない。
このTVメタデータをどう使うのかは、それぞれの業界、銘柄に委ねられている。
だが、右肩上がりに伸び続けるこのピンクの線は、とてつもなく大きなビジネスチャンスを私たちに示しているのではないだろうか。
次回以降も、オルタナティブデータとしてのテレビデータの活用例と、「TV Rank FinTech」で提供される魅力的なデータについてご紹介していく。
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著者:梅田仁 | Jin Umeda
ライフログ総合研究所(Life Log Lab.)所長
iPhone、iPod、iTunes、Mac、Apple TV、Apple Storeのシニア・マーケティング・プロデューサーとして、Apple(AAPL)を時価総額世界一のブランドに育て上げることに貢献。iTunesで取り扱う内外のエンターテインメント・コンテンツ、アーチストの需要トレンド、視聴者の嗜好パターン分析を通してプラットフォームメディアビジネスにも精通。2013年、ライフログ総合研究所を設立、TV Rank、Talent Rankサービスを展開中。著書:「売れない時代に売る新常識」出版文化社、2011